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中小企業にとって、働き方改革の他に必要なことは?

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 政府によって「働き方改革」が提唱され、日本の働き方が大きな転換点を迎えている。しかし、労働時間法制の改正だけでは限界があるように感じるのは筆者だけではないだろう。今回は、働き方改革も重要だが、これ以外に必要な点を中小企業の視点から考えてみたい。

働き方改革実行計画によって

 本年3月に働き方改革実現会議において「働き方実行計画」が決定された。これを踏まえ、以前議論されていたものの、暗礁に乗り上げていた労働基準法改正案が再び動き出そうとしている。仮に秋に行われる臨時国会で今回の改正案が通ったとき、中小企業に大きな影響を与えることは必至だ。具体的には、60時間超の残業に対する割増率の猶予措置廃止、働き方改革の主柱とも言える時間外労働の上限規制、これに伴う罰則の創設、年次有給休暇の強制的付与等が挙げられる。どれも一筋縄にはいかないものばかりだ。
 誤解のないよう断りを入れておくと、筆者はこれらの改正案に反対しているのではない。むしろ、これら改正案とともに実態も伴っていくのであれば、働き過ぎが解消され経営効率も高まる。労使とも良い方向に進むことができる。したがって、総論としては、今回政府主導のもと、日本の働き方を見直す議論がなされ、計画という形が提示されたことは意義のあることだと思う。一方、各論の部分で疑義が残る。敗戦から日本が見事な復興を遂げられた理由の一つに「長時間働くことは美徳である」という価値観があるとされ、それが未だ根強く残っているからだ。長らくこの価値観のもとできたわが国にとって、とかく働き方については、強制力のある法律を作るだけでは抜本的な解決策にならないと考える。

企業努力だけでは困難

 というのも、改正案が通れば、当然だが大企業はこれに適う体制にしていくだろう。他方、請負や委託によって経営が成り立っている多くの中小企業や個人事業者は、大企業の体制変更で処理しきれなくなった部分が、さらに外注として移し替えられ、業務量が増える可能性が高い。また、無理難題ともいえる納期の発注や、優位な立場を利用し暗に圧力をかけて押し通す(やらせる)といったことも現に行われている。取引先の要望・希望を叶えようとして無理を承知で引き受ける。でなければ、次の契約がないかもしれないからだ。このような状況だから、詰まるところ、〇〇に違反だ!××に違反だ!企業名公表だ!とやっても、中小企業は場当たり的な対応しかできない。余談だが、大企業内部においても、持ち帰り残業といった形でしわ寄せを被る社員がいることも、念のため付言しておきたい。
 すなわち、自社さえ良ければ何をしてもいいという姿勢にならぬよう、日本全体で、働き方を含めモラルに反した経済活動をしないための社会的合意を形成する必要があるのではないか。しかし、この形成を各企業の裁量に任せていては難しいだろう。企業は営利を目的に経済活動を行うからである。だから、納期設定や企業間取引のあり方についてルールを策定し、国がある程度強制力をもって監視、是正していくことも必要だと思うのである。

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