
「経営理念に定めた価値観」と「経営の実態」とが乖離する企業は少なくない。そのような企業には多くの場合、公にうたわれた価値観とは異なる「暗黙の価値観」が存在し、組織風土・企業文化に多大な影響を及ぼしているようである。そこで今回は、職場を支配しがちな「暗黙の価値観」について考えてみよう。
経営理念は社内外に約束する「公式の価値観」
多くの企業は経営理念を定めており、自社の価値観やバリューを理念に位置付けている。「価値観」や「バリュー」とは、経営活動における日々の判断や行動の基軸となる考え方である。企業は価値観に沿った事業活動を目指して経営理念などを定め、広く内外に公表することになる。
具体例で考えてみよう。例えば、自社の経営理念に「失敗を恐れず、失敗から学び、大きな成功を勝ち取る」と定めている企業があるとする。この場合、当該企業は「チャレンジ精神」を価値観・バリューとし、経営活動の拠り所として位置付けていると考えられる。この企業は定めた経営理念を内外に公表することで、ステークホルダーに対して「チャレンジ精神」にあふれる事業活動の励行を約束することになる。また、組織メンバーに対しては、日々の業務遂行における「チャレンジ精神」の大いなる発揮を要求していることになるのである。
具体例で考えてみよう。例えば、自社の経営理念に「失敗を恐れず、失敗から学び、大きな成功を勝ち取る」と定めている企業があるとする。この場合、当該企業は「チャレンジ精神」を価値観・バリューとし、経営活動の拠り所として位置付けていると考えられる。この企業は定めた経営理念を内外に公表することで、ステークホルダーに対して「チャレンジ精神」にあふれる事業活動の励行を約束することになる。また、組織メンバーに対しては、日々の業務遂行における「チャレンジ精神」の大いなる発揮を要求していることになるのである。
“実務の拠り所”として職場に根付きがちな「暗黙の価値観」
ところが、例えば上記企業の経営実態を精査すると、「チャレンジ精神」とはかけ離れた以下のような事業活動の現状を見て取れることがある。
上記のような現象が見られる職場には、「失敗を許容しない組織風土」や「新しい挑戦を忌避する企業文化」が存在していると考えられる。つまり、公に約束した価値観が「失敗を恐れず、失敗から学び、大きな成功を勝ち取る」であったとしても、日々の業務遂行において実際に拠り所とされている価値観は「失敗をしないこと」であり、「新しい挑戦をしないこと」なのである。
このように、明文化されていないにもかかわらず、誰もが従うことを暗に求められている価値観を「暗黙の価値観」もしくは「インフォーマル・バリュー」などという。
(1)上司が部下に対し、「なぜ、このような失敗をしたのか?」と詰問している
(2)上司が部下の新しい提案に対し、「前例がないから許可できない」と却下している
(3)上司が部下の新しい提案に対し、却下こそしないものの、苦々しい表情を浮かべている
(4)「挑戦をして失敗をした人材」よりも「挑戦をせずに失敗をしない人材」のほうが人事上の評価が高く、給与・賞与も多い
(5)「挑戦をして失敗をした人材」よりも「挑戦をせずに失敗をしない人材」のほうが、昇進が早い
(2)上司が部下の新しい提案に対し、「前例がないから許可できない」と却下している
(3)上司が部下の新しい提案に対し、却下こそしないものの、苦々しい表情を浮かべている
(4)「挑戦をして失敗をした人材」よりも「挑戦をせずに失敗をしない人材」のほうが人事上の評価が高く、給与・賞与も多い
(5)「挑戦をして失敗をした人材」よりも「挑戦をせずに失敗をしない人材」のほうが、昇進が早い
上記のような現象が見られる職場には、「失敗を許容しない組織風土」や「新しい挑戦を忌避する企業文化」が存在していると考えられる。つまり、公に約束した価値観が「失敗を恐れず、失敗から学び、大きな成功を勝ち取る」であったとしても、日々の業務遂行において実際に拠り所とされている価値観は「失敗をしないこと」であり、「新しい挑戦をしないこと」なのである。
このように、明文化されていないにもかかわらず、誰もが従うことを暗に求められている価値観を「暗黙の価値観」もしくは「インフォーマル・バリュー」などという。
お気に入りに登録