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特別読み切り

企業はなぜミスをなくせないのか。トップの危機意識を共有する「ダイレクトコミュニケーション」が状況打開の鍵

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社員に共有できていない“トップの危機感”

前述の年金業務受託団体の例で考えてみよう。

この団体は、1年間に8億円分ものミスを犯したのである。まともな経営者であれば、想像を絶する罪悪感・危機感にさいなまれてしかるべきであり、徹底した業務見直しに奔走するのが当然といえよう。

それでは、社員も経営者と同じ気持ちになるのだろうか。

もしも、全社員がトップマネジメントと同レベルで強烈な危機感を抱き、その危機感を維持したまま、1年間業務を遂行できたならば、恐らく次年度の業務上のミスは激減するはずである。

しかしながら、全ての社員が経営者と同レベルで危機感を持つことなど、残念ながら極めて稀である。この傾向は、企業規模が拡大し、組織構造が重層化・複雑化するほど顕著である。前述の年金業務受託団体の例で言えば、8億円分ものミスを犯しているにもかかわらず、多くの社員がその事実を他人事と捉えていても、何ら不思議ではない。

業務上のミスに対する社員の意識が変化していない状況下では、「ミス払拭」を目的に業務プロセスを変更したとしても、実効性を伴った“仕組み”の変更になるはずがない。

リーダーの“ダイレクトコミュニケーション”が組織に危機感を浸透させる

昨今、多くの企業が、組織内情報共有ツールとして「グループウェア」を利用している。業務ミスに関連する情報も、グループウェア上で公開することにより、社員の意識変革に繋げようと試みる企業が少なくない。

しかしながら、業務上のミスに対する社員の危機意識は、情報をグループウェアで知る程度では、十分に芽生えるものではない。コンピューター画面の表示には、情報伝達機能こそ存在するものの、見ている者に当事者意識を醸成する機能までは備わっていないためである。

真に、社員一人ひとりに健全な危機意識を植え付けたいのであれば、トップマネジメントが自ら直接、社員と顔を合わせて指導することが欠かせない。また、その際は「業務上のミスへの危機感」や「ミス撲滅への決意」などについて、「トップマネジメント自身がいかに真剣に考えているか」という“温度感”をもって社員に伝えることがポイントになる。このような手法を、「ダイレクトコミュニケーション」と呼ぶことがある。

“温度感”のある言葉は、「相手の心を揺さぶる」という特徴がある。WEB会議システムの利用が一般化した現在でも、直接顔を合わせて行われるコミュニケーションほど、“温度感”を表現するのに秀でた手段はない。社員の意識を改革し、企業を「高機能組織」へと変革するには、リーダー自身による継続的なダイレクトコミュニケーションが鍵となるのである。

本稿執筆中の令和3年10月6日、前述の年金業務受託団体が、「年金受給者約97万人に対し、他人の年金額が印刷された年金振込通知書を誤送付した」との報道が飛び込んできた(日本年金機構:「年金振込通知書」(令和3年10月定期支払)の印刷誤りについて)。ミスが払拭しきれない組織のリーダーの皆さんには、ぜひとも自身によるダイレクトコミュニケーションに取り組んでいただきたい。


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プロフィール

コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀 信敬(監修者)

コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀 信敬(監修者)

組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士
中小企業の経営支援団体にて各種マネジメント業務に従事した後、組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業までさまざまな企業・組織の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員。
コンサルティングハウス プライオ

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