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特別読み切り

社長の『視点』

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今日、組織やリーダーには、「常に変化し続けなければならない」という命題があります。
ところが、人間の脳は「現状維持」を求める仕組みになっています。
また、一度、変化を経験したからといって免疫力がつく、というものでもありません。
そもそも、今と同じことを繰り返していてさらに会社が成長するということはあり得ません。
いかに経営者がフレッシュな 「視点」 を持つか。
ここ数十年で、世界の企業で新しいCEOが 「社外」から 雇われるケースが
増え続けていますが、それも、こことつながっているように思います。

「社外から、新しくCEOとして雇われるとき、
『その産業のスペシャリスト』 と 『裾野の広いゼネラリスト』
どちらの方が成功する確率が高いのか?
その産業に特化した専門知識が豊富なCEOであれば、 より多くの情報に基づいた『判断』が
できる。しかし、違う産業から来た人間であれば、『新しい考え』を、その会社に持ち込む
ことができる」(※1)という期待があります。

ボストンにあるサフォーク大学のAbu M. Jalal氏とAlexandros P. Prezas氏は、
「社外から来たCEO」のいる企業について、その「会社のビジネスモデル」や
「株価パフォーマンス」などへのインパクトを検証・分析しています。
対象となった企業のうち、216社は、その会社と「同じ産業内」から来ていて、312社は、
「違う産業」から来ています。
「平均で見てみると、最初の2~3ヶ月は、『同じ産業内』から来たCEOの方が、より高い
リターンがあった。しかし、それ以降は、すぐに状況が変わり始める。
『CEOの引き継ぎ』後、3年目あるいは4年目には、『違う産業』から来たCEOのいる
企業の方が、『似通った産業』から来たCEOよりも、より高い『株式リターン』を
もたらしていることがわかった」(※1)

ここで大事なことは、CEOや社長を、「社外」から雇うべきだ、ということではありません。
CEOや社長が、あるいは組織が、「新しい視点」や「これまでとは違う視点」を得る機会や
環境をどれだけ創り出せるか、なのです。

カントは、それまでの従来の哲学の常識に対し、「人間は物自体を認識することはできず、
人間の認識が現象を構成するのだ」と説き、それを、人の宇宙の見方を根本的に変えた
歴史的事件になぞらえて「コペルニクス的転回」と呼びました。
「私たちは、世界を、『ある特定のレンズ』を通して見たとき、そのレンズから見える
レベルでの『現実』に基づいて仮説(theory)を創り上げる。
たとえば、かつて、私たちの先祖が、空に光る点を見たとき、彼らは、それらが、点で存在
していると推測した。ところが、望遠鏡ができて、それを通じて空を見たとき、実は、
それらの光の点が、実は、もっと大きくて、さらに、それらの周りにも、他の天体が旋回
しているのがわかり、人間は、それまでの『現実』を、改めなければいけなくなった」(※2)
   
『ヒューマンキャピタル投資の費用対効果』の著者で、
米国Bellevue大学の戦略部門副社長であるMichael E. Echols氏は、この「視点の転換」 に
ついて次のように語っています。
「企業の管理職は、それぞれが独自の『脳内構造』や『仮説』を持っている。
そして、それらが彼らの 『判断』 のベースとなっている。
問題は、数学者も、経済学者も、物理学者も、 自らの 『仮説』 を、定期的に検証して
いるのに、企業の経営の決定権者は、自分たち自身の『仮説』を、定期的に検証するなどと
いうことが、めったにないことだ。
サイエンスの世界では、『予測していた結果』が実際のデータと一致しないとき、彼らの
脳内モデルや理論、仮説は変わる。今日の企業のエグゼクティブの決断も
コペルニクス的転回の可能性を秘めている」(※3)
   
コーチングは、エグゼクティブの考え方自体を変えようとするものではありません。
「変える」のは、彼らの「視点」。そして、「視点を変える」プラットフォームとして、
コーチングが存在しているのです。
自身が経営者であり、エグゼクティブコーチでもあるRay Williams氏は次のように
書いています。

 「一世代前のCEOたちは、コーチなしで経営をやってきた。
 しかし、今日のCEOや社長たちが受けている圧力(pressure)は、
 かつてとは比べ物にならないほど大きくなっている」と。(※4)
 リーダー1人だけを開発してもそのフォロワーである組織全体が
 成長しなければ組織が成長することは難しい。

「社長」1人だけで、「社長」 という 「権威・権限」 だけで、「組織が動く」 時代では
もはやなくなってきているのです。

【参考文献】
 ※1 Matt Palmquist, Research Perspectives on the New CEO, 2013 Booz & Company Inc.
 ※2 Ben Waver (2013), People Analytics, FT Press (Financial Times)
 ※3 Michael Echols (2010) Why Measurement Is So Important
 ※4 Ray Williams (2012) Why Every CEO Needs a Coach, Wired for Successed for Success

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プロフィール

株式会社コーチ・エィ 創業者/代表取締役 伊藤守 氏

株式会社コーチ・エィ 創業者/代表取締役 伊藤守 氏

1951年生まれ。株式会社コーチ・エィ代表取締役。株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン、株式会社キャッチボール・トゥエンティワンなどの代表も兼務。日本大学卒業後、商社勤務を経て、貿易商社を設立。1980年にコミュニケーションに関する事業を始める。1997年、株式会社コーチ・トゥエンティワンを設立。2001年、株式会社コーチ・エィを設立。2007年より現職。経営者を対象としたエグゼクティブ・コーチングの他、企業、経営者団体、地方公共団体、教育機関などでの講演多数。また、神戸大学大学院MBAコースでコーチングの授業をもつ。日本における最初の国際コーチ連盟マスター認定コーチ。

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