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世界の経営学者はいま何を考えているのか ―― 知られざるビジネスの知のフロンティア

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『世界の経営学者はいま何を考えているのか ―― 知られざるビジネスの知のフロンティア』 (入山章栄 著/英治出版)

 本書はニューヨーク州立大学バッファロー校のアシスタント・プロフェッサーである著者が、世界レベルのビジネス研究の最新トピックをわかりやすく解説したものである。著者によれば、世界の経営学の実状は、日本でのイメージとは大きく異なる。例えば、日本で経営学の大家と言えば、ピーター・ドラッカーの名がすぐに思い浮かぶが、アメリカの経営学の学者たちはドラッカーの本を「学問としての経営学の本」と見做しておらず、ドラッカーを読んではいないと言う。また、「『ハーバード・ビジネス・レビュー』は学術誌ではない」し、アメリカのビジネススクールでは、教授は「よい授業をしても出世などできない」と述べている。もちろん授業も大事だが、学者としての評価は格のある学術誌にどのような論文を発表しているかだ。さらに、経営戦略論の大家マイケル・ポーターの理論は古くても通用せず、ケース・スタディーも研究の主流ではないという。なぜなら、学問としての経営学は実証に裏付けられた「科学」であり、欧米のトップクラスの経営学者の多くは、「理論⇒統計学的なアプローチ」を採用しているからだ。

 では、学術誌に掲載されている研究論文が実際のビジネスに役に立たないかと言うと、それがまた違うのである。本書には競争戦略、イノベーション、組織学習、ソーシャル・ネットワーク、M&A、グローバル経営、国際起業、リアル・オプション、ベンチャー投資などの分野で、ビジネス界の重大な「問い」は、どこまで解明されているかが紹介されている。例えば「組織の記憶力」に登場する「トランザクティブ・メモリー」という考え方。これは、組織の記憶力において重要なことは、組織全体が何を覚えているかではなく、組織の各メンバーが他メンバーの「誰が何を知っているか」を知っておくことである、というものだ。よく「情報の共有化」の重要性が取り沙汰されるが、最先端の研究によれば、全員が同じ情報を共有することは非効率で、共有すべきは、英語の“Who knows what” 、すなわち「知のインデックスカード」だというのだ。これはほんの一例で、他のジャンルにおいても、最先端の「ビジネス知」は実践で使えそうなものが多々あるから驚かされる。

 タイトルから学術書のような内容をイメージしてしまうが、いざページをめくり始めると、知的興奮にワクワクすること請け合いだ。経営者や管理職は是非一読し、手元に置いて頂きたい一冊である。
『世界の経営学者はいま何を考えているのか ―― 知られざるビジネスの知のフロンティア』 (入山章栄 著/英治出版)

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