『イスラーム文化 ―― その根柢にあるもの』(井筒俊彦 著/岩波文庫)
米調査機関ピュー・リサーチ・センターは今年、2070年にはイスラム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年になるとイスラム教徒が世界人口の35%に達して最大勢力になるとの予測を発表した。イスラム文化を知らずして、世界の経済は語れない。本書はイスラム研究の世界的権威である著者が1981年に経団連の経済人向けに行った講演録を「Ⅰ.宗教」「Ⅱ.法と倫理」「Ⅲ.内面への道」の3部構成でまとめたもの。預言者ムハンマドは商人で、イスラム教は砂漠を移動するベドウィンの価値観と真っ向から対立する「商人の道義を反映した宗教」であること。イスラム教において神と信者は「主人と奴隷」の関係で、社会生活から家庭生活の細部まで規定されていること。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の違い、アラブ系のスンニ派とイラン系のシーア派の違いなど、イスラムの文化的枠組をわかりやすく解説しており、一般人にとって最適の入門書となっている。経営に携わる人たちにとっては今後のグローバルビジネスを考えるためのヒントとなるだろう。

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