第97回  「仕事ははじめる最初が肝心である。その仕事が何であっても、最初の出発点をしくじると、たとえうまくいく仕事であっても、うまく発展しないものだ。」森永製菓 創業者 森永太一郎

　森永氏は苦労して森永製菓の前身である森永西洋菓子製造所を作った人物だ。

　生家は地域で一番の陶器問屋であり、網元でもあった。しかし次第に傾き、森永氏が6歳の時に父親が亡くなると財産は人手に渡った。その後、母親とも別れ、森永氏は親戚の家を転々とする幼少期を過ごすことに。

　成長してからは焼き物の販売を考え、24歳の時に渡米。しかし、うまくいかなかった。その後、異国の地で苦労して西洋菓子の作り方を学び、1899年に赤坂に森永西洋菓子製造所を設立した。最初は主にマシュマロ作りから始めたという。

　森永氏は創業に当たって「三分主義」を実践した。これは手元資産を固定費、流動費、予備費に分け、スタート時点の投資額を手元資産の三分の一に押さえるというもの。長年苦労して、ようやく創業にこぎ着けた日本初の西洋化菓子製造業だ。「最初の出発点をしくじる」ことのないように注意を払ったということだろう。

　仕事や事業に限ったことではなく、物事はスタートが肝心。何かを始める時には十分に考えてからにしたいものだ。