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第24回  「役員は10倍働け。俺はそれ以上に働く。」第4代経団連会長・元石川島播磨重工業(現 IHI)社長・元東芝社長 土光敏夫

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その質素な生活から、第二次臨時行政調査会の会長時代には「メザシの土光さん」(当時、夫婦でメザシを主菜とした質素な食事をしている風景がテレビで流されたのが理由)と呼ばれた土光敏夫氏。

1950年、石川島重工業の経営危機に時に土光氏は社長に就任し、徹底した合理化で経営再建に成功した。その手腕を見込まれて、68歳の1965年、やはり経営難にあった東京芝浦電気(現 東芝、以降東芝に表記統一)の再建を依頼され、見事成功させる。
その後、臨時行政改革推進審議会会長に就任し、「ミスター合理化」「行革の鬼」と言われ、凄まじい実行力を示した。

話を東芝時代に戻そう。社長就任時、東芝は大企業病にかかっていると感じた土光氏は、華美になっていた重役室などを取り壊して大部屋にし、重役にお茶も自分で入れろと指示したという。自ら早朝に出社し、重役の気持ちを引き締めると、それが社員にも伝わっていったという。

日経新聞の私の履歴書でこう語っている。

「私は、就任後直ちに、『一般社員は、これまでより3倍頭を使え、重役は10倍働く、私はそれ以上に働く』とハッパをかけた。10倍以上働く率先垂範は、私の出勤時間である。毎朝7時半には出社した。ところが、初出社の日、まさか社長がそんなに早く出て来るとは思わないものだから、受付では『どなたでしょうか』『こんど御社の社長に就きました土光という者です。よろしく』などという珍妙なあいさつが交わされ、微苦笑を誘う光景が出現した。守衛は、びっくりして最敬礼したのを覚えている。」

特に土光氏が行ったのは、現場への権限移譲である。その象徴が「チャレンジ・レスポンス」という言葉だ。

「事業部に全面的に仕事を任せはしたが、彼らが目標を達成出来なかったとき、『チャレンジ』する。」
「自分たちで決めたことがなぜ出来なかったのか。その説明を要求し、議論を呼びかける。そこで、相手はすばやくレスポンス(こたえ)しなければならない。チャレンジとレスポンスの中で、活発なバイタリティーと相互の信頼関係が生まれる。」
「『チャレンジ・レスポンス』は、そのディスカッションシステムでもある。」

さて、この度の東芝の不正会計事件では、経営トップが「チャレンジ」と称して過剰な業績改善を各事業部門に要求したことが主原因だと言われている。トップの無理な売上アップの要求に対してノーとは言えず、売上水増しにいたったというのが第三者委員会の報告である。

同じ「チャレンジ」でも全く別物に見える。そこにはディスカッションなど全くなかったのだろう。ちなみに、第三者委員会は、この「チャレンジ」の廃止を勧告している。

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 経営プロ編集部

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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