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命運をわけたリーダーたちの一手

第5回  新卒社員の定着率は100%――地域ネットワークづくり、学生との「マッチング」を重視した新卒採用とは(多摩冶金株式会社)

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今回のリーダー:多摩冶金株式会社 取締役副社長 山田 真輔 氏

今回のリーダー:多摩冶金株式会社 取締役副社長 山田 真輔 氏

中小企業にとって、特に大卒の新卒採用は様々な壁が立ちはだかる。社内に大企業のような新卒採用に精通した担当者がいる中小企業は少ない。また、会社の認知度やブランド力に課題を抱え、採用するうえでの予算は、大企業に比べて少ないだろう。しかも最近は、少子化の影響で学生数が減ってきており、新卒採用は容易でない。一方で、大企業は一括採用を中心に大量採用を続けており、双方の差はますます大きくなりつつある。今回は、独自の採用活動を続けながら、新卒社員の定着率100%を実現する多摩冶金株式会社の山田真輔取締役副社長に話を伺った。

リーダープロフィール
山田 真輔(やまだ しんすけ)


大学卒業後、商社に入社。MBA取得後、起業経験を経て2014年に家業を継ぐ為、多摩冶金に入社し、加工現場や技術、総務を経て2017年に副社長に就任する。特に新卒や中途の採用、人事、マーケティング、ITなどに力を注ぎながら、同じく3代目社長に就任した兄(山田 毅氏)を支える。

採用活動で重視した7つのポイント

航空機に使われる金属部品の熱処理加工を行う多摩冶金(たまやきん)株式会社。同社は東京都武蔵村山市に本社や工場を構え、グループ会社を含め120人の社員数を抱えている。新卒採用を開始したのは2015年から。これまでの採用実績は16年卒2人、17年卒2人、18年卒2人、19年卒3人、20年卒4人。同社は、計13人の新卒を事務職や技術職で採用している。

注目すべきが、新卒社員の退職者は2020年7月時点でゼロであること。新卒採用を開始してから、新卒社員の定着率は100%を維持している。地域に密着した母集団形成と、様々な観点から丁寧に評価する採用手法が効果を発揮しているそうだ。2016年卒の学生から新卒採用を始めたきっかけは、第二新卒の存在だった。2015年に20代半ばの3人を採用したところ、いずれも仕事への姿勢がよく、上司や社員からの評価が高かったという。

「1951年の創業から長年にわたり、当社の採用は中途社員が中心でした。中途採用試験を繰り返すことで、人が足りなくなったから欠員補充するという印象を社員に与えていたのかもしれません。会社の安定的な成長、発展のために、毎年、新卒を雇うことで、経営に関わる者として長期的な視野に立つ姿勢を社員に伝えたいと考えました。それが、社員の意識を変えることにもなると期待しています」(山田真輔 取締役副社長)

新卒社員を採用するにあたって、まず同社は、副社長やキャリアコンサルタントの資格を持つ総務グループマネージャーの平岡 恵美子氏が中心となる新卒採用グループを発足させた。採用活動をするうえでは、次の7点を重視した。

(1)多摩地区でのネットワークづくりに力を入れる
(2)大学は、「中堅校」を集中的に訪問する 
(3)2回の面接や筆記試験では、マッチングを最重要視
(4)小論文や面接では、学生の「過去、現在、未来」を把握
(5)会社見学やランチを通じて、社員との相性を確認
(6)脳特性の試験で、さらに相性を確認
(7)まずは、学生が会社に入社希望の意志を伝え、その後、会社が内定か否かを通知


真っ先に取り組んだのが、本社のある26市、4町村の多摩地区を中心としたネットワークづくりだった。採用ターゲットを「多摩地区で長く仕事をしていきたい」と強く願う学生に絞ったからだ。

「最近、多摩地区での就職を希望する学生が増えているように私は感じ取っています。このような学生は新宿といった都心の駅より、当社の最寄り駅のJR昭島駅や西武立川駅などに向かうほうが好きなようです。また、残業は少なく、就労環境はホワイトであることを求める学生も増えています。多摩地域で働けることと、就労環境が整備されていること。これらを条件にする学生をターゲットにするのが、当社の現状にもマッチングすると考えました」(山田副社長)

副社長と総務グループマネージャーは、地域ネットワークづくりに向け、各地の金融機関や経済団体、大学、専門学校、市役所を訪問し、担当者と意見交換したり、自社の説明を何度も行ったりした。

訪問する大学に関しては、特に首都圏の中堅私立大学20~30校に絞った。これらの大学は、中小企業への就職に力を入れているからだ。同社が特にPRしたのは次のポイントだ。

・新卒採用に力を入れたいきさつ
・会社の現状
・社員の育成方針(特に20∼30代の社員)
・福利厚生
・労働時間の管理や有休消化率などの就労環境


いくつかあるポイントのなかでも、特に就労環境が、同業界の中小企業と比べて整っていることを強調した(2019年の月平均残業時間は12,7時間で、有給休暇消化率は80%)。就職課やキャリアセンターの職員などとやりとりするなかで、学生に自社を紹介してもらえそうな場合は、再訪問して、大学との関係を強化していったという。
採用活動で重視した7つのポイント

このあと、どのような選考を多摩冶金が行ったのか、具体的な取り組みや効果などが語られます。

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