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クオリティフォーラム2017 登壇者インタビュー ながら美容で「忙しいひとを美しいひとへ」~Panasonic Beautyのブランドマネジメント~パナソニック コミュニケーション部 クリエイティブ課主幹の齊藤美和子さんに聞く(後編)

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戦後、荒廃した日本から産業界が復権し高度成長時代を経て、高いグローバル競争力を実現できたのは、「メイド・イン・ジャパン」と言われる、日本製品の高品質さにあることは周知の通りである。その高品質経営実現の一端を下支えしてきたのが、TQM(品質経営)の推進やデミング賞で知られる日本科学技術連盟だ。

日本科学技術連盟では、長年に渡り、全国の企業の“クオリティ”に関するベストプラクティスをベンチマークする場を提供している。「クオリティフォーラム2017(品質経営総合大会)」がその一つで、本年は2017年11月14日~15日に開催する。
同フォーラムでは、50件を超える講演が行われる予定であるが、経営プロでは、注目する講演のインタビュー記事を掲載する。
(聞き手:ジャーナリスト 伊藤 公一氏)

――パナソニックビューティー(PB)のブランディングを進めていく上で、どんなことに苦労されましたか。

齊藤:微妙な言い回しになりますが、男性の理解を得ることです。PBのヒット作に「寝ながらできるナイトスチーマー」という商品があります。これを市場投入する時、営業の男性陣にはその価値がまったく分かってもらえず、悔しい思いをしました。男性には女性と同じような感覚がないからです。

 この商品の売りは「寝ながら」エステができることなのですが「なんで寝ながらする必要があるの」とか「ナノイー発生器とどこが違うの」とか見当違いのやり取りに時間を取られるのです。寝ていても使える、熱くならないスチームの工夫とかがまったく理解されない。当然、販売計画も低く見積もられました。それを聞いて、私たち女性陣は「すごく画期的な商品なのに、なんで?」と疑問に思いました。

――美容に対する女性の思いに対する想像力がいささか足りなかったようですね。

齊藤:忙しい毎日を送る女性が優雅に美容に使う時間なんてなかなかありません。だからこそ、寝ている間にエステができるなんてスゴイ!助かる! という女性の声で生まれた商品です。でも、男性にはその価値が分からない。結局、女性の意見をしっかり集めてちゃんと伝えました。

 結果は空前の大ヒット。女性の実感に根ざしたものづくりは信頼していいんだと思ってもらえたのではないでしょうか。この経験から、潜在ニーズや女性の生活実態を男性が理解できるように伝えることの大切さを学びました。そのためには客観的なデータによる地道な説得がモノを言うようです。

■ものとブランドのビジョンをぶらさぬ

――商品力とブランド力はどちらか一方が秀でるのではなく、両者の兼ね合いが大切だと思うのですが、実際どうなのでしょう。

齊藤:禅問答のようですが「商品がブランドに見合わないことが起こりにくい」ブランドの作り方をすれば良いと思います。例えば「忙しいひとを、美しいひとへ。」は、効率的に美しくなれる点にフォーカスしています。このように、ものづくりのビジョンも目指す商品もはっきりしていれば商品開発上のロスが少なくて済みます。

 ビジョンがぶれれば開発は遅れます。半面、パワーが集中できれば開発スピードも技術力も上がるので、結果的に良質の商品に仕上がるはずです。要するに、ものづくりとブランドづくりのビジョンがぶれないで、みんなが同じ方向を向いて作っていれば、見合わない商品にはなりづらいと思います。

――片方の力が微妙なら、他方の力で補えるとも言えますね。

齊藤:商品が大きく進化しないタイミングであっても、商品そのものを見直して、それにどう価値づけしていくかでフォローできると思います。例えば、技術はこの水準までしかいけなかったけど、この商品のこの価値をこう伝えたらお客様に役立つんじゃないかなといった提案ができるはずです。美容家電として上の世代には微妙だけど、若い世代には受け入れられそうみたいなフィードバックもできます。

 一般論として、商品とブランドがフォローし合っていることはあります。しかし、ブランドが育っていないから、良いものが売れないという場合には、やはり、ブランドづくりをちゃんと考えるしかありませんね。

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