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経営戦略の実現を可能にするためのリーダー育成とは(3/5)

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リーダー育成の障害になる企業文化を改善してこそ仕組みが機能する

リーダー育成の障害になる企業文化を改善してこそ仕組みが機能する

 日本でも色々な企業がプロのマネージャーを採用し、トップの移動が起こっています。ローソンの新浪剛史さんがサントリーに行き、マクドナルドの原田泳幸さんがベネッセに行きました。多くの企業も人材、リーダー育成に関する根本的な見直しをするべきです。これは戦略的に行うことが重要で、企業としてリーダーを育成するという意思決定が必要です。リーダー育成を企業戦略の一貫として位置づけます。ビジネスと組織を分ける傾向がありますが、組織戦略があってビジネス戦略があります。日本の大企業は、管理者がリーダー育成の責任を負っているという認識がありません。管理者はビジネスをマネージすることが仕事で、人材育成をやらなければいけないとは言いますが、実際やっていません。評価制度でもマッチしていないので、ビジネスのほうに力が行ってしまっています。それから、人材育成にどれくらいお金をかけるかという、スポンサーと予算の設定も重要です。また、なぜやるかという目的意識も大切になります。

 私がP&Gにいるとき、ジェネラルマネージャーは全て外国人でした。そこで私たちは「5 by 5」ということを考え、10人のジェネラルマネージャーのうち5人は日本人の人員でやろうと目標を立てました。誰がやるのか、そのためにどういうことをしないといけないのかを考え、実行していきました。かつて日本人はリーダーシップがないというラベルが貼られていましたが、現在のP&Gのアジアの社長は日本人です。明確に目標と決意を持ち、実行することで組織は変わっていきます。

 日本の場合、リーダー育成に障害となる組織文化が存在します。まず極端な指揮命令が挙げられます。極端な指揮命令は、イニシアチブや積極性を損ない、言われたことだけをやる人材が育ってしまいます。指揮命令はマネージャー育成には最適ですが、リーダーを育成しようとするとこれが障害になります。次に年功序列です。競争がなく、何年か経てば皆が上がって行くので、リーダーシップを発揮しようという人が出てきません。極端な調和主義もいけません。大きな会社に行くと、協調性のある人が必ずいます。協調性は大事ですが、同時に新しい見解でやり抜く、行動力のある人を雇わないといけません。上司依存型は自主性をそいで発想力、想像力を失わせ、リスク回避ばかりする人材をつくります。リーダーシップとは、ある程度のリスクを取れるということです。

 このような現状がある以上、土壌ができていないのでいくら仕組みを入れても、リーダーは育ちません。強い人間ならこの中でも芽を出しますが、全体的にリーダーシップを育てようとするなら変えなければなりません。

 GEやP&Gなど、日本企業でもリーダー育成ができている会社はどのような組織風土かというと、権限移譲、実力成果主義、明確な業務責任があります。かつてソニーには「アイデアの民主主義」という発想がありましたが、このようにまずやらせてみることです。社長も部長も平社員も、皆で意見を言い合い、ベストな意見を採用していけば、その土壌の中でリーダーが出てきます。また実力成果主義により権限を与えていきます。実力成果主義については、日本は将来、必然的に変わっていくでしょう。明確な業務責任として、大きな仕事が与えられ、権限も責任も負うようにさせると、その中で自分の努力を駆使して仕事を進め、結果を出せるようになります。このように、リーダーを育成できる文化があって、仕組みが機能してきます。

〔経営プロサミット2015 6/5講演「経営戦略の実現を可能にするためのリーダー育成とは」より〕

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プロフィール

元P&G米国本社<br>  組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント<br> AIDA LLC代表 会田 秀和 氏

元P&G米国本社
組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント
AIDA LLC代表 会田 秀和 氏

プリガム・ヤング大学マリオットスクールオブビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G 本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&G フィリピンの改革、P&G ジャパンとP&G コリアのグローバル化、P&G グレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)。著書に『P&G 流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

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