経営・ビジネスの課題解決メディア「経営プロ」

イベント・講演録

経営戦略の実現を可能にするためのリーダー育成とは(2/5)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
マネジメントとリーダーシップの違い

マネジメントとリーダーシップの違い

 マネジメントとリーダーシップは違うものです。マネジメントは枠組みがあり、決まりがあり、その中で行動して結果を出すことを言います。戦略、制度、評価、働き方が決められていて、その中で今日期待される結果を出します。この点では日本は世界一です。
これに対してリーダーシップは、違った環境、違った競合に出会う中で、自分たちの今までのやり方が危うくなっているという見解を基に将来の構造をつくり、必要な変革を起こすことです。日本企業は、これをやろうとする人を潰そうとします。調和できない人だからです。今までずっとやってきて、自社の成功モデルだと思っていたことを潰そうとするな、言われたことをやればいいのだと考えます。その結果、トップは下の人について、自主性がない、発想が出ていないと嘆きます。

 1人の中に、マネジメントとリーダーは共存可能で、企業が成功するには両方が必要です。生産ならマネジメントで良いでしょう。はっきりとした目標を立て、仕組みを整えてコストを下げるためにコントロールしていくやり方です。これが日本のマネジメントのやり方で、それがかつては強みでしたが、環境が複雑化し、変革を起こさないといけないときにはリーダーシップが必要です。

 リーダー育成のために戦略を考えることが必要です。3~5年でどういう処理をするか、それに必要な組織をどうつくるか、どう実践するか考えます。それから制度の仕組みも変えないといけません。報酬制度、業務工程、仕事のやり方、従来のリーダーシップの考え方も変えます。今までは協調性のある企業を雇っていましたが、これからはもっと違う人を雇わないといけません。IT系の人はその典型で、考え方も仕事のやり方も服装も違います。こういう違った人を取り入れ、情報システムも変えます。組織の中身を変えるには、コンシューマーや競合の考えについて、どれだけ情報を持っているかが重要です。戦うためには構造も変えないといけません。
サントリーの人とよく話しますが、彼らは世界に出ていくために、海外事業部なのかマトリクスなのか、管理体制という構造を変革しようと考えています。戦略と組織能力がペアになって成果が出てきます。組織デザイン的、行動科学的な考え方で戦略をつくり、構築します。ビジネスは事業部長でマネージできますが、ユニークなリーダー育成、人材育成、組織能力の育成ができるのは経営者です。その権限は人事にはありません。経営者がリーダー育成の戦略を立て、仕組み、制度、プロセス、文化を構築し、経営者が主導しなければなりません。

〔経営プロサミット2015 6/5講演「経営戦略の実現を可能にするためのリーダー育成とは」より〕

お気に入りに登録

プロフィール

元P&G米国本社<br>  組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント<br> AIDA LLC代表 会田 秀和 氏

元P&G米国本社
組織変革・HR担当ヴァイスプレジデント
AIDA LLC代表 会田 秀和 氏

プリガム・ヤング大学マリオットスクールオブビジネスで組織行動学修士を取得後、オハイオ州シンシナティ市にあるP&G 本社に入社。同社において、人事および組織デザインの社内プロフェッショナルとして、P&G フィリピンの改革、P&G ジャパンとP&G コリアのグローバル化、P&G グレーターチャイナの改革などを手がける。現在、AIDA LLC(Aida Consulting LLC)代表として経営戦略、組織デザイン、戦略的人材マネジメントに関するコンサルティングを行っている。他にアストラゼネカ株式会社の社外取締役、ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授(組織行動学)。著書に『P&G 流 世界のどこでも通用する人材の条件』がある。

関連記事

会員登録 / ログイン

会員登録すると会員限定機能や各種特典がご利用いただけます。 新規会員登録

会員ログインの方はこちら