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人材教育に見る「在宅勤務」の問題点

「企業活動にオフィス不要」は本当か<前編>

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「アイコンタクト」が機能しないモニター越しの呼び掛け

ITツールで行う意識教育が効果を生みにくい理由は、2点考えられる。1番目は「アイコンタクトの効果が生じにくいこと」である。

効果的な教育を行うには、さまざまな教育テクニックが必要となる。代表的なテクニックのひとつが、目と目を合わせる「アイコンタクト」という手法である。つまり、効果的な教育は、教育担当者が教育対象の社員と視線を合わせながら行うことがポイントとなる。

教育担当者がアイコンタクトをしながら教育を行った場合、された側の社員は「自分に向かって語り掛けている」という気持ちを強く抱くことになる。その結果、教育に対する参加姿勢が前向きになり、社員の行動変容が起こりやすい。

ところが、テレビ会議システムでモニター越しに教育を受ける状態では、社員の心に「語り掛けられている」という感情が湧きにくい。そのため、教育内容を知識としては理解できるが、社員の行動変容には繋がりにくいものである。

同じ空間を共有しているからこそ可能なことがある

ITツールで行う意識教育が効果を生みにくい2番目の理由は、「“熱意”が社員に伝わりにくいこと」である。

例えば、社員にコンプライアンスを教育して「行動変容を求める」場合、単に理屈としてコンプライアンスの説明をするだけでは不十分だ。コンプライアンスの重要性について、社員の心の琴線に触れるよう、熱心にかつ力強く語り掛けることが必要となる。このような教育により、はじめて社員の心の中に「私もコンプライアンスを守ろう!」という強い気持ちが芽生え、社員の行動が変わるのだ。

しかしながら、どんなに教育担当者が熱心に語り掛けたとしても、モニター越しでは社員にその“熱意”が上手く伝わらない。そのため、社員が教育内容に心を動かされることも少なく、行動変容に結び付きづらいのである。

人材教育の現場には、「同じ空間を共有しているからこそ可能なこと」が存在する。特に社員に意識変革・行動変容を求める教育では、これが効果を大きく左右する。このように、在宅勤務者に対する教育を行う際は、「ITツールは万能ではないこと」を心に留めておきたいものである。



大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表 
(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)
https://www.ch-plyo.net

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 経営プロ編集部

経営プロ編集部

経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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