Q9、Q10 チームワークを育てるには

米国のギャラップ社による生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」について、今回は Q9、Q10を解説する。

米国のギャラップ社による生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」について、今回は Q9、Q10を解説する。

Q9 職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている。
My associates or fellow employees are committed to doing quality work. (Help me feel proud)

Q10 職場に親友がいる。
I have a best friend at work. (Help me build mutual trust)


どちらも、チームワークがテーマである。上司として、どのようにコミットしたらこの項目の点数が上がるのか、見ていこう。

仕事の質の定義と共有

あなたは質の高い仕事をしているか? と尋ねられると、ほとんどの人は「している」、「そうなるよう努めている」と答えるだろう。しかし、Q9のように、同僚について尋ねられたらどうだろうか。

ひとりやふたりは「あの人は質の高い仕事をしている」といえる同僚がいるだろう。しかし、チーム内の全員について尋ねられれば、評価の低い人もいるのが一般的だ。

それが単にチームの中の能力のばらつきなのか、それとも評価する側の問題なのか、そこはわからない。しかしひとつ言えるのは、評価する側に「どのような仕事が質の高い仕事か」という点についての理解がないと、この問いは無意味だということだ。つまり、上司がすべきこととは、「あるチームの中で望むべき質の高い仕事とはなにか」ということを、部下に理解させることである。

管理職のほとんどがプレイングマネージャーである現状では、実際に見本を示すことが近道かもしれないし、多くの上司は、そうしたいと望んでいるだろう。

しかし、別に自分自身が見本にならなくても構わない。もちろん、部下よりも上司の仕事の質が落ちているのは論外だが、エースとして見本を示す栄誉は、どちらかというと部下にゆずったほうが、うまくまとまる。

日本企業では、一般に「欠陥や誤りがない」状態を、「質の高い仕事」と定義しがちだ。しかし、そう決めてしてしまうと、部下はミスをしたときにそれを隠そうとする。つまり、逆効果になってしまうのだ。

人は間違いを犯すものだ。その前提をもとにと考えると、「質の高い仕事」の定義はまったく違ったものになる。「部下が問題に気づき、その解決法を見つけるプロセス」というのがその定義だ。そうすることで、同僚の仕事を他人事のように評価するのではなく、協力しあって問題解決に結びつけようという風土につながる。

また、この定義を部下の間に共有させることで、自らのチームを誇りとしてとらえさせることができるのである。

人となりを伝える機会を作る

Q10にある「親友」という言葉は学生時代を思い起こすようで、おとなにとっては少し面映いと感じるかもしれない。職場における親友とは「よいことも悪いことも素直に話せる相手」であると考えると、その違和感はなくなるだろう。よいことはともかく、困りごとを相談するには、相手との間に信頼関係が必要だ。職場の中に信頼関係があってこそ生産性も向上し、会社に見切りをつけて離職するのを防ぐこともできる。

Q3の解説の際(Q3:部下の強みを知り、社内でそれぞれの得意分野を共有して相互理解を深める)、互いの強みを共有する中で信頼関係を作る方法を解説したが、それだけでは不足だ。雑談する、それも仕事以外の趣味といった個人的なテーマで話すことが、最も効果的なのだ。要は、「相手の人となりを互いに知る」ということだ。

雑談さえいっさいなく一日中仕事にあけくれる職場は、メンタルヘルスやチームワークを理解していない上司には理想かもしれないが、できる上司には悪夢のような状態だ。悪夢から覚めるには、上司が率先して、部下同士が互いの人となりを知る機会を作る必要がある。

社外の社交的行事はうってつけだ。読書会や釣り旅行、ボーリング大会など、趣味に関わるものならなおよい。飲食をともにするのも、人との距離を近くするのに効果的だ。

しかしそれでは、若い人にそっぽを向かれている会社主導の宴会や、運動会、社内旅行といった行事とは、なにが違うのだろうか。

そこが上司の工夫のしどころなのである。業務時間内に茶話会を開いてもよいし、会議や朝礼の中に「○○さんに注目」といったテーマを入れ、従業員それぞれが職場の仲間に対して、自分の興味や趣味、社外の目標などを話してもらってもいい。

チームビルディングを目的とした研修も、仕事とは違う側面を互いに見せることができ、業務時間内に会話するのでは「雑談ばかりして遊んでいるのではないか」という後ろめたさも払拭することができる。

職場の生産性を高めるために、互いに協力しあい、ともに努力し、背後に注意しなくてよい、そんな環境を作ることを目指そう。


李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org