Q8 会社の理念を個人の役割と結びつける

米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」。今回は Q8について解説する。

米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」。今回は Q8について解説する。

Q8 会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる。
The mission or purpose of my company makes me feel my job important. (Help me see my importance)


多くの会社で、社是や理念をことあるごとに従業員に伝えている。朝礼などで唱和している事業所も多いだろう。しかし、個人の仕事と会社の理念がどう結びつくか、部下に伝えているだろうか。

抽象的な理念を具体的な行動に「翻訳」する

「会社の使命や目的」は、社是・理念・ミッション・ビジョンなど、さまざまな呼び方がある。ここでは、それらを総称して「理念」という用語を使う。

会社の目的はなにかというと、「利潤追求」という答えが返ってきそうだが、それだけでは人は動かない。会社の理念は、単なるアクセサリーではなく、きれいごとでもない。その会社がどのようなことを重要だと考えているのか示し、従業員の価値判断のよりどころとなるために掲げるものだ。

従業員としても、単に給料がもらえるから働いているのではないだろう。金銭だけが目的であるならば、より短い時間で、よりラクな仕事がいいはずだが、実際にはそうではない。自己実現・顧客満足・社会貢献なども重要な働く目的となる。そして、個人の目的だけでなく、会社の理念より大きな目的の一翼を担って、会社単位で、個人ではできないことを実現する。これもまた、働く目的のひとつになりうる。

このように、個人の目的と会社の目的が一致していれば、幸せな職業生活が送れそうなものであるが、実際のところなかなかそうはいかない。会社の理念は抽象的に表されているのに対して、仕事の一つひとつは具体的な行動だ。

理念とは一般的に抽象的なものだ。ある意味、万能だともいえる。理念から導き出される望ましい行動が多岐にわたるからだ。ある行動が、どれほど会社の理念と一致しているのかを、言葉だけを見て判断するのは難しい。企業の中に話を移すと、上司の大きな役割は、理念という抽象を、具体的な行動にまで落としこんで部下に伝えることだ。企業トップもおそらく熱心に理念について語っているだろうが、言葉をそのままくりかえすだけで終わらせてはいけない。理念をどれだけ噛み砕いて伝え、一つひとつの仕事においてなにが重要なのかを部下に説明できるかどうか。Q8で高得点をとるには、上司にそのような「翻訳力」が必要になる。

部下の価値観を知り、理念との共通点を伝える