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"人が動く"コミュニケーション術

第23回 離席時のコミュニケーション行動

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自身が業務をおこなっている場所を離れる際、周辺で勤務をしている同僚や後輩、部下などに対してどのようなコミュニケーションを取るか次第で、職場の生産性が大きく変わってくるといわれる。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。

黙って職場から姿を消す管理職

筆者は若手社員の皆さんから、次のような相談を受けることがある。

「ウチの部長は、気付いたら職場からいなくなっていることがあります。何も言わずに席を外すので、どこに行ったのか、いつ戻ってくるのかなどがまったくわかりません。そういう時に限って、部長宛ての電話、来客などがあり、非常に困っています」

席を外すときは、近隣の席の同僚などに“行き先”と“戻り予定時刻”を告げる。職場の基本動作として、新入社員が指導を受ける「離席時のコミュニケーション行動」である。本稿を読んでいるリーダーの皆さんも、社会人になりたての若手社員の頃、上司・先輩に同様の指導を受けた方が多いのではないだろうか。

ところが、若手社員の時に身に付けたはずの「離席時のコミュニケーション行動」が、管理・監督職などのミドルマネジメントクラスになると、おろそかになるケースがある。そのため、職場によっては「黙って姿を消す部長」といった人が存在することになるのである。

理由はさまざまだが、「部下に行き先など告げる必要はない」といった考えから、黙って席を外すリーダーもいるであろう。中には、「私用で外出するため、部下には言えない」ということもあるようである。

企業によっては、離席時の行先を一覧できる行先予定表などを作成し、使用しているケースもある。しかしながら、一般的に行先予定表は、離席理由を網羅的に記載するわけではない。そのため、「予定表に何も記載がないのに、部長が席にいない」ということも起こりがちである。

上司に対する不信感・不満感が生産性低下の一因に

リーダーが「離席時のコミュニケーション行動」を怠ると、職場生産性が低下するという。そのような現象が起こる1番目の理由は、部下に「予定外の業務」が発生することがあるためである。

例えば、部長が黙って離席した後に、部長宛てに電話や来客、役員からの呼び出しなどが発生した場合には、部下が部長の行先をあちこちと探すことになる。つまり、“行き先”と“戻り予定時刻”が告げられていれば発生することがなかった「部長を探すという仕事」に、部下が時間を割かなければならなくなる。その分、本来の業務に充てる時間が少なくなり、生産性が低下する結果となる。

2番目の理由は、職場に対する部下の帰属意識が低下するためである。部下によっては、席に戻った部長に対して「どちらに行っていらしたんですか?」と、尋ねることもあるだろう。しかしながら、「うん、ちょっと……」とだけ答え、席を外した理由をはっきりと説明しないリーダーも散見される。

黙って姿を消し、理由を尋ねても明確には答えない。このような上司の行動に対して、部下は不信感・不満感を抱くことになる。その結果、部下の心から「この職場で一生懸命に働こう!」という気持ちは削がれ、業務に対する“前向きな行動”が失われてしまうことになる。

職場生産性が低下する3番目の理由は、部下も『離席時のコミュニケーション行動』を怠るようになるためである。

部下は上司のまねをするという特徴がある。そのため、「黙って姿を消す部長」が統括する職場では「黙って姿を消す社員」が出始めることになる。その結果、協調性をもって勤務をするという“前向きな行動”が組織メンバーから失われ、生産性が下がる結果となる。

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