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"人が動く"コミュニケーション術

第10回  「終了報告」の受け方

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 部下に作業を命じると、作業の終了後、その部下はリーダーに終了した旨を報告に来るであろう。そのようなとき、リーダーはどのような態度で部下の終了報告を受けるのが好ましいのだろうか。

「感謝の気持ち」が表れているか

 リーダーは日々の業務で、部下にさまざまな作業を命じるであろう。たとえば、部長が部下にコピー取りを命じたとする。しばらくして、コピーを取り終えた部下が、出来上がったコピーを持参して「部長、コピー終わりました」などと終了報告に来る。このとき、皆さんであればどのような態度で部下と接するだろうか。

 このような場面を注意深くみていくと、
・「うん」「ああ」などと言いながらコピーを受け取る。
・無言でコピーを受け取る。
などのケースが数多く見受けられることに気付く。しかし、こうした対応は、決して好ましい態度とは言えない。コピー取りという作業を部下にしてもらったことに対する「感謝の気持ち」が表れていないからである。

 コピーを取るなどの難易度の低い作業であったとしても、完了したことに対して「助かったよ。ありがとう」など「感謝の気持ち」を表すリーダーの“言葉掛け”があれば、業務や職場に対する部下のモチベーションは各段に上がるものである。その結果、雑務といわれるような作業を命じられたとしても、“前向き”な気持ちで取り組める可能性が高くなる。人間には周囲の期待に応えようとする特質があるからである。

 ところが、コピーを取った後の終了報告に対して「感謝の気持ち」を示さず、至極当然のごとく、出来上がったコピーを受け取るようなリーダーの態度は、部下のモチベーションを著しく低下させてしまうことがある。その結果、職場の雰囲気の悪化、生産性の低下、離職率の上昇などにも繋がりかねないので注意が必要である。

人間は“理屈”ではなく“感情”で動く

 このような対応をとるリーダーの中には「仕事なのだから、部下が上司の指示に従うのは当たり前である。当たり前のことを行っただけだから、感謝は必要ない」などと考える方もいるようである。

 確かに、組織の中では下位者は上位者の指示に従い、誠実に職務に専念することが労働契約上の義務である。その意味では、命じたとおりにコピーを取る行為は、労働契約上の義務を果たしただけとも言える。しかし、人間には「“理屈”ではなく“感情”で動く」という特性がある。自分が行った仕事に対して感謝されれば嬉しいし、大して感謝もされなければ面白くはないのだ。

 また、中には「上司は部下よりも偉いのだから、感謝など必要ない」という考えを持つリーダーがいるかもしれない。しかし、部長が「部長である」という理由で部下よりも偉いわけではない。役職の違いは組織内での単なる“役割の違い”にしか過ぎないからである。

 それにもかかわらず、「上司は部下よりも偉い」などの職業観を持ち「感謝など必要ない」などと考えていては、部下の“前向き”な行動を引き出すことなど、期待できるものではない。

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