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"人が動く"コミュニケーション術

第3回  「気が進まない仕事」の命じ方

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 リーダーには「部下があまりやりたくないであろう仕事」を命じなければならないときがある。そのようなときでもコミュニケーションのとり方次第で、部下に気持ち良く仕事を行わせることが可能になる。

単純作業はどう命じればよい?

 組織を円滑に運営するために必要とされる業務は、必ずしも創造性に富んだ面白い仕事ばかりではない。コピー取りのような単純作業、面倒な仕事も少なくない。このような仕事を命じられた社員の中には、「またコピー取りか」などと命じられた仕事を “マイナス” に捉えるケースもあるものである。中には単純作業を命じられたことに対して明らかに不満の表情を見せる社員もいるであろう。このように部下が「あまりやりたくないであろう仕事」「気が進まないであろう仕事」を気持ち良く行えるようにするには、どうすればよいだろうか。

 たとえば、部下にコピー取りを命じるとき、「これ急いでコピー取って!」などと命令口調で指示をするケースが散見される。しかしながら、相手が「あまりやりたくないであろう仕事」「気が進まないであろう仕事」を単に命令口調で命じた場合、命じられた相手が気持ち良くその仕事を行うことはない。表面上は何食わぬ顔をしていても、心の中では「また、俺がコピー取りか」などという思いを持ちがちである。

 「また、俺がコピー取りか」などという思いで行われた仕事は、コピーを取るだけという単純な仕事でも明らかに質が落ちてしまう。部数が足りない、サイズが違うなどのミスが発生しやすくなり、業務の遂行に支障が出がちである。また、「コピーを取る」という仕事の重要性を認識する機会も得られないであろう。

人が動く『クッション言葉』と『依頼形フレーズ』

 相手が「あまりやりたくないであろう仕事」「気が進まないであろう仕事」を命じる場合には、『クッション言葉』と『依頼形フレーズ』という2つのコミュニケーション手法を組み合わせて指示を出すのが効果的である。

 まず、『クッション言葉』とは指示内容の前に添えて使うことにより、相手に与える印象が “丁寧で柔らかくなる” という効果がある言葉である。前述のケースであれば「これ急いでコピー取って!」という指示の前に、たとえば「悪いけど~」という『クッション言葉』を添えて、「悪いけどこれ急いでコピー取って!」と言うことができる。

 『クッション言葉』とは相手に何かを依頼するとき、相手の申し出を断るときなど、必ずしも相手の意向に沿わない話をする場合に文字どおり “クッション” の役割を果たす言葉である。“クッション” の役割を果たす言葉を枕詞のように使用することで、相手のマイナスの気持ちを和らげる効果が期待できる手法といえる。

 また、『依頼形フレーズ』とは指示内容を「命令形」ではなく「依頼形(疑問文)」で伝える手法である。前述のケースであれば「これ急いでコピー取って!」という「命令形」の言葉を「これ急いでコピー取ってくれないか?」と「依頼形(疑問文)」で話す手法を『依頼形フレーズ』という。

 部下に対して「これ急いでコピー取ってくれないか?」と頼むような口調で命じると、部下から「今、手が離せないんですけど」などと断られやすいように思えるかもしれない。しかしながら、決してそのようなことにはならない。依頼を断ることもできるような「依頼形(疑問文)」で命じた場合のほうが「気持ち良くこちらの依頼を受け入れる」のが人間の心理である。

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