経営・ビジネスの課題解決メディア「経営プロ」

理念浸透で成果があがる組織と低迷する組織の違い

第6回  行動が伴わない部下への目標の持たせ方

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2016年もあと数日。経営者やリーダーの皆様の多くは、すでに来年の目標を設定し、実現それをイメージしてすでに取り組みをはじめているのではないでしょうか。理念の実現にはしっかりと目標を立て、それを実行することがとても大切です。
 しかし、私が研修などでかかわる社員の多くは「今年はどのような目標を掲げ、何を達成しましたか? 来年は?」とお聞きするとうつむいてしまう人が大半です。
 そもそも「目標」というものに、少なからずネガティブなイメージを持っている方も多い様子。そのイメージは、「ノルマ」、「負荷」、「重い」、「辛い」、「ねばならない」、「やらされ感」、「やってもやっても……」、「次から次へと……」、「勝手に決められたもの」など、その言葉を聞くだけで気持ちが沈んでしまうような、そんなイメージをもっているようです。
 さて、目標に対して少なからずネガティブなイメージをもつ彼らも、新年には「今年こそは」と目標を立てるそうです。しかし、お正月が過ぎ、数日会社に通ううちにその気持ちも萎えてしまい、ただ粛々と目の前にある業務をこなす日常に埋没していきます。
 経営者やリーダーのように、目標を設定しそれに主体的に取り組むことができる人と、目標を設定しても3日坊主で終わる人。その差は一体なんでしょうか?

「やる」と言っていても行動が伴わないのはなぜか?

 心理学の基本として学ぶフロイトの学説に、「意識」と「無意識」があります。私たちには「意識」がありますが、その意識には自分が気づいている分野である「意識」と、自分が気づいていない分野である「無意識」の二つの層があるという説で、「意識」は5%、「無意識」は95%といわれています。
 実は、目標に取り組むことができるかどうかは、この「意識」と「無意識」の関係に大きく影響されるのです。
 経営者やリーダーのように、自分で目標を立てて達成できるタイプの人は、「意識」と「無意識」が「一致」しています。わかりやすく言うと「やろう」と思ったことと「やりたい」と思うことに、ズレがない状態です。
 一方、目標に対してネガティブなイメージを持っている人は「やろう」と思ったことと「やりたい」ことが「不一致」の状態になっているのです。つまり、「やろう」と頭では考えるけれども、本音は「やりたい」と思っていない。そのため、頭で考えて悶々としているうちに機を逸し、「できなかった」という結果だけが残ります。
 よく、部下に関するお悩みで「やると言っていても、行動が伴わない人をどう指導したらいいでしょうか」とご相談をいただくのですが、「頭ではわかっているのに、心がそれを受け入れていない」という心の部分をもう少し深く掘り下げていかないと、的を射た策がないのです。

自分でも気づかない本心

 「やる」と言っていても「できない」。このような人を見ると周囲は「やる気がない」と評価します。しかし一番ダメージを受けているのは本人です。言葉では「やる」と言っているのに、それができない。できない理由は無意識下にあるため、本人もその理由がわかりません。しかし「やるといったのにできなかった」という結果は本人の気持ちに残り、やがて積み重なっていくと、無意識のうちに「どうせまたできない」、「自分はダメな人間だ」と思い込むようになり、さらに「やろうと思っても、できない」状態に陥ります。
 しかし、行動が伴わない人も、周囲から「認められたい」という気持ちは持っています。そこで一般的に良いとされていることを「試してみよう」と考えるわけですが、これがまた厄介なのです。
 その「良いとされていること」こそ「目標を持つこと」であり、ビジネスパーソンやアスリートの成功談に必ずといって良いほど出てきます。華々しい実例を目にして「今年こそは」や「今度こそは」と考え目標を立てるのですが、いつの間にかその気持ちは萎え、結果として「できない」という現実に直面し、より一層目標に対してネガティブな印象を、無意識に持つようになるのです。

お気に入りに登録

関連記事

会員登録 / ログイン

会員登録すると会員限定機能や各種特典がご利用いただけます。 新規会員登録

会員ログインの方はこちら