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理念浸透で成果があがる組織と低迷する組織の違い

第3回  管理職やリーダーが理念・方針を浸透しやすく、メンバーが体現しやすい環境づくりのコツ

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 前回は、理念・方針の浸透には、管理職や職場のリーダー的存在の巻き込みが肝要であること。その一方で、彼らは理念・方針をもとに育成された経験に乏しいため、それを自分たちがどう浸透させていけばよいかがわからない場合が多いこと、をお伝えしました。

 そこで今回は、管理職やリーダーの経験を理念や方針につなげ、彼らの言葉や行動で伝えていけるようにするためのアプローチ方法を紹介します。

 理念・方針は、その言葉の響きからとても高邁で厳格なものという印象があります。しかし実際は、その組織の価値観や日々の習慣を明言したに過ぎません。よって、多くの場合一人ひとりの中には、理念・方針につながる思いや考え方、行動基準が備わっています。

職場で取り組む理念体験の引き出し

 理念を掲示し、カードやブックレットを作成して朝礼などで唱和するなど、しっかり取り組んでいるはずなのに浸透している実感が薄い。このように感じられている経営者も多いのではないでしょうか。
 浸透している実感が持てない要因は、多くの場合、理念と日常行動との結びつきがされていないことに起因しています。反対に、浸透できている組織では、日常行動の中で体現している理念行動を、相互に確認し認められるよう工夫しています。
 工夫の1つとしてどのような職場でも取り組みやすいのは、朝礼やミーティングなどで定期的に「順番を決めて発表してもらう」という方法です。
 発表内容は、日常的な些細なことを題材とします。例えば、「朝の“おはよう”の一言で、今日も1日がんばれます」、「ミスをして焦っていたときに、先輩が機転を利かせて対応してくれて本当に助かった」、「最近行ったお店でこんな体験をした。うちで言えば、こんな風に展開できるそうだ」といった内容を、理念とつながる形で語ってもらいます。
 すると、一人ひとりが理念に対してどのようなイメージを描いているのか、どのようなことを大事にしているかがわかります。このような一人ひとりの価値観をお互いに「聞き合い相互理解を深めること」。これが、理念についての理解を深め体現を促進します。

「コミュニケーション・ハンドブック」制作と活用を通じた理念・方針の体現

 「聞き合い相互理解を深めること」から、一歩進めた取り組み方法もあります。 その取り組みとは、組織で大事にしたい考え方や行動をまとめた「コミュニケーション・ハンドブック」(以下「ハンドブック」)の制作です。
 制作にあたっては、その会社のブランド力を高められるようなコミュニケーション上のポイントを抽出できるよう工夫します。
 具体的な進め方は、大きく分けると3段階です。
 1段階目は、全管理職にビジネスコミュニケーション上で大事にしていることについてアンケートを実施します。アンケート内容は、例えば「経営者が繰り返し伝えている大事なこととはどのようなことですか?」、「お客様から言われて一番嬉しかった言葉はどのような言葉ですか?」、「始業前に心がけていることはどのようなことですか」といった内容です。アンケートは回収後、その組織の業務場面に即した形で理念・方針につながる行動やエピソードを抽出し、それを要素化してハンドブックの仮版に反映させます。
 2段階目は、各事業部やエリアの代表者を選出してワークショップを開催します。仮版として用意したハンドブックを、理念や方針に照らしながら今後10年を見据え、継続していくべき考え方・行動の要素を選んでもらいます。また、皆さんがピンときやすいフレーズなどについても検討してもらいます。その後、参加者の意見やアイデアをもとに、正式なハンドブックに磨き上げます。
 3段階目は、出来上がった「ハンドブック」のコンセプトと活用方法についての研修会を、全管理職、リーダー層に実施します。その中で大事な点は、一人ひとりの経験やアイデアが全てハンドブックに盛り込まれていることを認識してもらうことです。そして、自分の言葉でメンバーに伝えるための準備をします。

 さて、このような「ハンドブック」を制作する過程で私がいつも感じることが3つあります。
 1つ目は、それぞれ入社動機、経験、専門、価値観はバラバラでも、組織として大事にしている考え方や行動の基準は似ていること。
 2つ目は、それぞれが大事にしていることを共有した上で、組織の理念・方針に基づき内容を精査する過程で、共通目的や目標の理解が進み相互に協力し合う関係性が育まれること。
 3つ目は、外部が「たたき台」を作成することで、それぞれの立場から意見が言いやすくなり、チームが形成されやすくなること。
 よって「理念浸透に課題を感じる」場合、お互いの意見や考えを聞きあい、認め合う機会や場の不足が大きな原因ではないかと考えています。

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