グローバル企業ではリーダーシップをどのように組織に浸透させ育成しているのか

【世界に通用するリーダーをつくる】第六回は、1.期待するリーダーシップを共通の言葉にし、2.全社に理解を広めてリーダーシップを育て、3.将来の組織のリーダーを見出し育成する、という3つのステップに分けて、グローバル企業でのリーダーシップの浸透と育成について紹介します。

【世界に通用するリーダーをつくる】第六回は、1.期待するリーダーシップを共通の言葉にし、2.全社に理解を広めてリーダーシップを育て、3.将来の組織のリーダーを見出し育成する、という3つのステップに分けて、グローバル企業でのリーダーシップの浸透と育成についてフィリップスの実例を参照しながら紹介します。

1.期待するリーダーシップを共通の言葉にする

企業が戦略を描きゴールを設定してその実行を全社に展開するのと同様に、戦略を実行する上で社員全員に求められるリーダーシップについても明確に設定し、全社に理解と実践を浸透させることが必須である。戦略やゴールに他社のベストプラクティスの焼き直しがあり得ないのと同じ理由で、期待するリーダーシップも、その企業の現状を踏まえて、迫られている変革の実行に必要な行動に焦点をあてた内容でなければいけない。全社に理解を共有し日常の職場で語られるように共通の言葉にして、トップ自らが伝えることが重要だ。
フィリップスでは「私たちのコンピテンシー」として別表の6つのコンピテンシーを社員全員に求めるものと定義している。
グローバル企業ではリーダーシップをどのように組織に浸透させ育成しているのか

2.求めるリーダーシップの理解を全社に広め、育てる

フィリップスではPPM(Philips Performance Management) と呼ばれる社員の業績マネジメントプロセスの中で、マネジャーと部下が「私たちのコンピテンシー」の6項目を使って、自身の強みをさらに伸ばし、また改善点に取り組むことについて話し合う。そこで能力開発目標と実行計画を合意し、日々の仕事の中でフォローしながら社員一人ひとりがコンピテンシーを育てていく仕組みになっている。
さらにユニークな取り組みとして「Culture Awareness Workshop : カルチャー・カーペット・セッション」というものがある。これは各部署・チームにおいて、6項目のコンピテンシーが日々の仕事の中でどんな意味を持つのか、職場で起こっている具体例をもとに考えてお互いに共有するという内容の1.5~2時間で行うワークショップだ。マネジャーが中心になってチームのメンバー全員がリラックスして楽しみながら、私たちのコンピテンシーについての理解を深めるのである。楽しみながらという点では、2014年に全世界で展開された時、ワークショップの最後に撮った写真を社内のコミュニティサイトにアップし、コンテストスタイルで最優秀作品を選ぶというイベントとセットで実施された。
このように期待されているリーダーシップについて社員が日々の仕事においてその実践を意識できること、さらにマネジャーと社員あるいは社員同士の職場における日常の会話の中で自然に語られていることが重要だ。
グローバル企業ではリーダーシップをどのように組織に浸透させ育成しているのか

3.人財を見出し、将来のリーダーとして育成する

企業において共通の言葉となったリーダーシップの定義を、あらゆる人財マネジメントのプロセスとリンクさせる。それを活用して各階層ごとに社員のリーダーシップの潜在力と可能性を見出し、引き出し、伸ばしていくことを徹底する。これが将来の組織のリーダーの育成につながるのだ。
筆者が勤めてきたどのグローバル企業においても、全世界の組織における主要ポジションの後継候補者と将来のリーダー候補者をその企業独自のリーダーシップの定義を用いて評価し、階層毎にレビューを行うことにより全社におけるキータレントの配置と育成を戦略的に実行している。レビューに際してキータレント選抜のためのアセスメントセンターを行う場合の評価項目にもこの定義が使用される。選抜されたリーダー候補者に対するリーダーシップトレーニングのプログラムも、その定義に沿った内容で構成されている。また企業オリジナルの360度評価を行う場合にも、必ずその定義に沿った形で結果がレポートされるよう設計されている。
このように企業の共通の言葉となったリーダーシップのあり方を身につけた人財がリーダーとして育成され任命されていき、さらにそのリーダーシップが発揮されることで、組織のカルチャーとして浸透していくのである。