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世界に通用するリーダーをつくる

第4回  なぜ日本にはリーダーが育ちにくいのか、どうすれば育てられるのか ~診断篇~

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 【世界に通用するリーダーをつくる】第四回は世界に通用する真のリーダーシップが日本で育ちにくい状況を診断します。ポイントは、1. リーダーシップの理解の共有と実践、2.日本の組織の強み、3.思考・行動のパターンから見る日本人の強みと弱みの3点です。
 この連載ではこれまで世界で活躍するリーダーと日本人リーダーの行動の違いを明らかにしてきました。ここでこれをスキルや経験の不足といった技術的な問題と捉えて直ちにその対処にあたることは、事の本質を見過ごし根本的な問題に対応できなくなるという大きなリスクを抱えることになります。すぐに対策を考え実行しようと逸る気持ちはしばらく横に置き、今回はこの問題の本質について的確な診断を行うことにより、適切で効果的な処方箋が作れるよう準備します。

1. リーダーシップの理解の共有と実践

 リーダーシップという言葉はやや曖昧に使用されている。筆者の知る限り日本の企業においてリーダーシップといえば「力量」すなわち能力・スキルと資質の意味で使われることが多い。「彼はリーダーシップがある」というものだ。そのスキルはマネジメントスキルと混同されることもある。その場合はリーダーシップがもっぱら資質についての定義となり、さらにそれはカリスマ的なものや強さに求められることとなる傾向がある。
 リーダーシップにはリーダーとしての行動という意味があり、欧米の企業ではよくこの意味合いで使われている。あなたの会社ではどのくらいリーダーたる行動について語られているだろうか。「我が社において求められるリーダーシップはどういうものか」という問いについて、共通の言葉で説明できるように明文化されているだろうか。リーダーシップの重要性は行動にあり実践にある。そしてそれは一部のリーダー層のみにとどまらずメンバー全員に求められるものである。組織のトップ以下あらゆる階層のマネジャーは、目指すべきリーダーシップを行動指針として共通の言葉を用いて日々のビジネスの中で語り伝え、自らも実践して範を示していく。それなくしては真のリーダーシップは育まれない。

2. 日本の組織の強み

 組織力を日本の強みという観点で考えると「規律」「現場力」「全員参加型」「チームプレー」というキーワードが並ぶ。サッカーなどスポーツでも日本は「個の力」で劣るも「組織力」で勝るということがよく指摘される。すなわち方針、目標、戦術がいったん伝えられると、個人は各自の持ち場に強い責任感を持ってやり抜くと同時にお互いにカバーし合い、全員が常に改善を意識して進め、その達成と実行のためにチーム一丸となって取り組むということが、日本で一般的に言う組織力であろう。この枠組みの中で日本におけるリーダーの役割やリーダーシップが定義されている点に注意が必要である。
 また日本ではヒエラルキーとルールが重要視される。「上司の指示は絶対である」という傾向は強く、「車の全く走っていない交差点でも赤信号であれば道路を渡らず待つ日本人」という例えがあるように、ルールや決まりを尊重し順守することが多い。結果として、ルールや決まりのない中で自らイニシアティブをとり、ヒエラルキーを飛び越えて人を結集し物事を進めるような行動よりも、役割に沿って責任が明確に規定される中で献身的にやり抜き、自分の意見を押し出すよりも周囲を見ながら助け合うという行動が求められ、そうした人を育てることにより日本の組織力が高められてきたのである。言い換えると日本では、組織力を高めるためにリーダーシップを奨励し強化することがあまり重要とされていなかったのだ。


《次ページに続きます》

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