世界で活躍するリーダーは何が違うのか?

【世界に通用するリーダーをつくる】第二回は、グローバルリーダーの日々の職場でのリーダーシップ行動がどのようなものなのか、その実際のケースについて紹介し、考えてみます。

世界で活躍するリーダーは何が違うのか?

 【世界に通用するリーダーをつくる】第二回は、グローバルリーダーの日々の職場でのリーダーシップ行動がどのようなものなのか、その実際のケースについて紹介し、考えてみます。

「世界で活躍するリーダーは、どんな人物なのだろうか?」
「その行動は、日本人のリーダーと何か違うのだろうか?」

 筆者がこれまでグローバル企業の日本法人で100名を超える様々な階層のリーダーと一緒に仕事をしてきた経験の中から、営業の一部門で約30名からなる組織の長として就任した英国人のH氏の例を紹介したい。H氏にとってアジアの駐在任務は初めてで、来日前に日本のビジネスや顧客について仕事上の関与はほとんどなかった。日本語はできないため、顧客とのやり取りは通訳を介して行うが、社内の会議やコミュニケーションは英語で行っていた。
 来日直後は直属の部下一人ひとりと話しながらメンバーとの信頼関係作りに注力した。メンバーの話を聴く際にも自分の経験から判断したり、自分の考えを伝えて従わせようとすることはなく、むしろ「どうして」といったコンテクストを理解することに努めていた。仕事の進め方は、マネジャーとして「自分ができること」を明確にした上で「メンバーが自分で責任をもってやるべきこと」を徹底して求め完遂させることが彼の一貫したスタイルであり、 “He (she) gets things done himself (herself).” (彼・彼女が自分自身で事を成し遂げる) というフレーズを何度も聞いた。
 通常の営業活動はもちろん大規模の重要プロジェクトにおいても、自分が決して表に出ることなく、本社とのレビューなど限られたエリア以外の業務は信頼して任せた担当責任者に委ね、自身はサポートに徹した。また管理職の部下がうまくチームを率いて成果を出せないケースでも、自分が変わりにその仕事を請け負ったり、マイクロマネジメントによって達成しようとはせず、あくまでマネジャーとしての役割遂行ができるよう助言やサポートを行った。それが困難と見ると慎重かつ迅速に手を打つのだが、その時にも明確なコミュニケーションと本人の今後のキャリアでの成功につながるアプローチを徹底した。ボスや他部門のリーダーとは、自部門の利害だけでなく会社全体のことを考えながら、相手の立場を尊重し敬意をもってオープンに接することで信頼関係を築いていた。
 彼自身は特別なカリスマチックなリーダーではない。偉そうに振る舞ったり相手を威圧することで優位に立とうという姿勢は皆無だ。明るく誠実で真面目なごく普通のマネジャーである。彼と二人でオフィスを出て居酒屋でビールを飲んでいた時に、彼の携帯に部下から相談の電話が入り、にこにこしながら「うん、うん、いいじゃないか。いいよ。大丈夫だ、そうしてくれ」と話す様子からは、頼れる兄貴のような存在感が感じられた。
いつも模範的なわけではない。難しい局面で相手への直言を躊躇したり、利害の対立する場面では感情的な言動が表われたり、部下に対して楽観的になりすぎて上手くことが運ばない等々、失敗も少なからずあるのだが、そんな側面も含めて私たち日本人の中にも見られるような、実直で人間味あふれる人物であった。
駐在期間を終えて日本を離れた後はヨーロッパ、アジアの主要マーケットのトップを歴任し、グローバル・エグゼクティブチームのメンバーに就任するという、まさにグローバルリーダーと呼ぶべき存在にまで引き上げられている。
 さて、日本人がH氏のようなリーダー行動を身につけ発揮することは難しいのだろうか?紹介したエピソードは何ら特別なことでなく、皆さんの会社のリーダーも十分やれそうだ、あるいは「それなら既にうちの会社にもいる」と思われたかもしれない。
ではそうした皆さんの身近にいるリーダーと、何か違う点はあるのだろうか?同じようなリーダーシップを発揮しているのであれば、その方々は海外でも通用するのだろうか?残念ながら、そこまで簡単なものではないようだ。
 次回はこの「何が違うのか」さらに「その違いを埋めていくためには、何が必要なのか」について掘り下げて考えてみたい。