経営成果を左右する集団性格(組織文化)

経営トップの声を実現するには、社会や市場をより良くすることに貢献する「理念・ビジョン」と、需要を創造する「戦略」が必要になります。そして、需要創造型の戦略を実践する能力や、「理念・ビジョン・戦略」を主体的に受け入れ、活用する集団性格(組織文化)が必要になります。

 経営トップの声として、数年前より次のようなことが聞かれます。

①業績を上げ続ける創造的な文化(風土)を創りたい
②自発的に動機付けを図ることのできるマネジメントにしたい
③活気が溢れ、知恵が生まれ、心理的にも健康的で、業績を上げ続けられる組織にしたい
④理念を浸透させ、実践する組織にしたい
⑤グローバルな観点で、成果を上げ続ける組織にしたい

 これらの経営トップの声を実現するには、社会や市場をより良くすることに貢献する「理念・ビジョン」と、需要を創造する「戦略」が必要になります。そして、需要創造型の戦略を実践する能力や、「理念・ビジョン・戦略」を主体的に受け入れ、活用する集団性格(組織文化)(*1)が必要になります。
 今回は、集団性格に焦点を当てて、どういう集団性格を創れば、経営トップの意向が実現できるのかを考えたいと思います。

「理念・ビジョン・戦略」を主体的に受け入れ活用する集団性格とは

 「理念・ビジョン・戦略」を主体的に受け入れ、活用するにはどうしたらよいか。それは、社会や市場をより良くすることに役立ち、実現のための知恵や力を協働・共創し、自らの可能性を極め続けていく「お役立ちの仕事ぶり」ができる状態にすることです。
 ジェックでは、この状態を「お役立ち道」と呼んでいます。
 具体的には、

①より良い社会や市場にすることに役立つこと → お役立ち
②協働・共創すること → 協調
③可能性を極めること → 挑戦

 この三つの価値観とそれに基づく行動様式を高めれば、「理念・ビジョン・戦略」を主体的に受け入れ、活用できるようになるのです。

経営成果を左右する集団性格

 「お役立ち道の文化」が根付いている組織には、どのような特徴があるかを考えてみましょう。

①個人のお役立ちの精神と技量を、お互いの知恵と力を合わせて、組織として高め続けることができる
②強い絆に結ばれたチームワークで、集団創りが促進されている
③現場の知恵から、現場で活用できる新たな価値(サービス・商品)の芽を創ることができる
④自分と他人を尊重する精神が根付き、モラルを順守する
⑤自らのプロデュースで組織化し、組織の力を引き出すことができる
⑥組織内外に発生するプレッシャーをバネにして、柔軟で弾力のあるメンタルを育てることができる。

 等々の「仕事ぶり」が組織の当たり前の基準として根付いていることといえます。

集団の規範性

 人間は、集団の中で、自分の存在が許される範囲といいものを感覚的に捉えるために、集団の規範を理解し、その規範に合うような言動を取ろうとします。
 ここが重要なのですが、その集団の規範が「挑戦・協調・お役立ち」の価値観に沿っていれば、その集団に入った人は、その規範に合わせようします。
 ある中部地区の企業において、社員二百名ほどを対象に、CS(カスタマー・サティスファクション)活動の一環として、あいさつの基本動作トレーニングをしたことがあります。それから二十数年が経ち、ほとんどのメンバーが入れ替わっているにもかかわらず、今でも高いレベルが保たれています。
 継続的なマネジメントにも要因がありますが、新入社員は、その組織の規範に合うように、一生懸命努力しているのです。
 このように、一度形成された集団の規範は、個人に対して影響を与え続けます。
 お客様のお役に立つという目的と行動が集団の規範に合ってくると、組織は協調し、挑戦を高めていきます。
 ある企業では、リーダー数名に新しいスキルや成功確率の高い考え方を学ぶ機会を創りました。彼らは学んだスキルや考え方を他のメンバーに伝えることにとどまらず、顧客や組織外の人々に役立った小さな成果にスポットライトを当てて、組織内で共有化を図っているのです。
 組織内で共有化することで協調を高め、小さな成果を称賛することで、挑戦を高めている。これは、集団の規範性に着目して、組織全体のレベルを上げているといえます。

集団性格革新の要

 集団性格は、集団としての強い成功体験や失敗体験、および、その時々の打ち手によって形成されるといわれています。
 右肩上がりの時代に、トップの戦略が当たって業績を上げていた組織では、メンバーが入れ替わっても、トップ依存の体質が払拭されないという話をよく聞きます。
 「理念・ビジョン・戦略」を実践するという強い成功体験はできないにしても、前述の小さな成果体験は積めるはずです。小さな成果も積もれば、過去の強い成功体験を凌駕することができるようになるのです。
 小さなお役立ちの成果に着目し、共有化と称賛を繰り返すことで、挑戦が高まり、やがて大きな変革のうねりとなっていくことでしょう。そして、新たな「お役立ち道の仕事ぶり」が組織に創られていくのです。
 以上のように、集団性格を高めることは、経営成果に直結することなのです。


*1 集団性格(組織文化):組織文化の構成要素は数多ありますが、ジェックでは、「挑戦・協調・お役立ち」の三つの価値観とそれに基づく行動様式による集団の特徴を、「集団性格」と位置づけています。なお、この三つの価値観と行動様式の有効性は、慶應義塾大学との共同研究によって検証されています。