“批判を恐れず決定しているか”で判断せよ

「経営判断」とは、どちらが正解かが拮抗している場合に、問われる意志決定を言います。現実に「経営判断」をする時に、経営トップの心の中には様々な葛藤が発生します。

「経営判断」とは、どちらが正解かが拮抗している場合に、問われる意志決定を言います。そのため、次のような必然を含んでいます。

①どちらの経営判断による決定をしても、批判は出る
つまり、「半分は批判の対象になる」ことを孕んでいるものなのです。

②「経営判断の決定による成果」を出す過程では混乱が起きる
どちらを選択しても、リスクとリターンが半分と言うような状況では、「経営判断の決定による成果」を出すのには、時間がかかります。一時的には、経営判断による決定が間違っていたのではないかと思えるほどに、反対側の意見の正当性が証明されるような成果が生まれる場合が多いのです。
そして、現実に「経営判断」をする時に、経営トップの心の中には様々な葛藤が発生します。

経営トップの葛藤と痛み

①どちらを決定しても批判は出る
→これは、経営判断による決定事項に反対する勢力に口実を与えることになるのではないかという不安が心の痛みとなる。  
幹部会で意見が割れて、どちらかを判断しなければならない場合、反対意見者であっても、決まった以上、幹部として、決まった施策で成果につなげることに全力を傾けて行かなければなりません。しかし、トップは反対意見者が反対派を創ってしまうのではないか、と心を悩ますことにもなるのです。

②成果を出す過程では、混乱が起こる
→「経営判断による決定」とは反対の意見を証明するように、ことが進んでいるのでないかと言う不安が付きまとう。
経営判断による決定とは違う方策もそれなりに理があります。だからこそ半数は、それを支持してきたわけです。その方策を、新たな経営判断による決定の方策に変えるにはタイムラグが生じることになります。その間、現場は混乱することも多いものです。新たな方策による成果がでるまで、経営判断の決定と反対の成果が出ているように見えるのです。
それは、「経営トップ」にとって、「経営判断による決定が間違いだったのか」「いや、時間がかかっているだけ」と言う心理的葛藤を産むことになります。そして、「批判する側」の冷ややかな視線を受け続けることになるのです。
今から10数年前、ジェックの役員体制が大きく変わり、社長以下大半の役員が、年末に突然交代した時期がありました。年始恒例の勉強会では、新任の取締役の就任演説があり、方針・体制の発表がありました。その時の方針や体制・施策に対して、旧取締役も含め、全社員の多くから、不安と不満を根底にした批判が噴出していたことを覚えています。
新任の役員は、何日も議論を重ね、統合し、新体制を打ち出しました。
それは、新たな人材の登用と、三つあった部門を廃止すると言う経営判断による決定でした。この経営判断による決定は、どちらにせよ、プラス点・マイナス点が拮抗した状態での決定でした。そのため、不安や批判は多くでることも予測していました。
しかし、不安や批判は、半年経っても止まないどころか、むしろ、大きくなってきました。
そしてある日、ある役員が承認したうえで、新体制を止めるための決起集会が予定されていることが発覚したのです。
つまり、新体制の出した方針に対する反論は、反対派に勢いを与え、役員を巻き込んで、社内の対立構造を産んで行くことになったのでした。  そのような中、新体制の打ち出す方針や施策の正当性を忍耐強く伝え続け、小さな成功事例を創る地道な活動を続ける以外に共感者を創る方法はなかったことを覚えています。
最終的には、共感者が増えて行ったのですが、その当時の社員の不安感情はピークの状態であったことと思います。
当時を振り返ると、もっと早く、社員の不安感情を取り除き、批判を昇華することができていたはずであると、当時の自分の力の無さを悔いるばかりです。このように、経営判断には、批判が付きまとうものです。
では、経営トップとして、どうすれば良いのでしょうか?

①経営判断による決定を正当化するのは理屈ではない
最終的には、理屈ではなく、小さくても成果が出てくれば、反対派も納得せざるを得なくなるでしょう。また、その成果は理念をより具体化したものであれば、なおさら、納得することになるでしょう。小さくても、その成果事例を数多く出すことに注力することです。

②批判歓迎の精神を持つ
「経営判断による決定とは反対の意見」を正当化するようなことが増えている場合、「問題だ、問題だ」と反対意見の人たちは主張してくる場合が多いものです。そのような場合は、「組織として学習するチャンスである」と捉えることです。
「経営判断の決定による成果」が出ないプロセスでは、多くのことを学ぶことができます。市場のニーズの精査や、マネジメントのあり方、戦略・戦術や、実行する技能の精査など、組織の知恵を引き出すチャンスになるのです。一時的な混乱があっても、経営判断による成果を早く出すには、批判や成果が遅れていることを「学びのチャンス」として捉え、小さな成果に着目していくことです。

そして、経営判断による決定をする前には、敢えて批判してみるということも必要になります。反論・批判は新たな視点を見つけ、より良い判断をするヒントになります。そのような心の目で批判・反論を見れば、批判側や反論側にも新たな視点を見出す機会を創ることになります。ですから、ジェックでは「悪魔の弁護人」と言う表現で、経営判断による決定を敢えて批判するプロセスを通すようにしています。これは、共通の認識を創るだけでなく、経営判断による決定への理解を深めることにつながります。

更に、このプロセス自体が経営トップ自身の心の力を磨くチャンスと捉えることです。
経営トップは、柳のような「柔軟さ」と雑草のような「打たれ強さ」、それに「ぶれない信念」が必要になります。「組織の能力を引き出す力」も問われるものです。経営判断の一つ一つが自分の心を磨くチャンスと捉えることです。

経営判断まとめ

□経営に矛盾のない正解はなく、マイナスの伴わない決定もない。
□批判を恐れず決定をせよ。批判は、より良くするヒントにつながる。
□失敗からは、多くのことを学ぶことができる。
□批判や失敗は、経営トップとして必要な心の力=メンタルパワーを強化するチャンスとなる。
□差引合計でどちらが、目的・使命の実現に近いかで判断する。

以上、経営トップの判断基準の一助になれば幸いです。