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第10回  人事部の変革

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トップダウンの変革ではなく、ボトムアップの変革を

 欧米の優良企業の行った変革の方法に共通するところは、トップダウンの変革ではなく、ボトムアップの変革でした。トップダウンはあくまでも人事部に対する変革の要望、理由づけ、意義を伝え、理解させ、共通言語がなければ共通言語を作るための議論を含めた機会を提供することだけした。
 人事部が、自ら“戦略的パートナー”になりたいと思うことができれば、経営陣は人事部主体のプロジェクトにし、人事部に任せることが成功要因となることを知っていました。
 失敗要因はこの逆です。トップダウンによる変革では、プロジェクトがうまく機能したとしても、終わってみると人事部から「これは自分たちで決めたのではないのでできない」「人事の実態に合っていないことを要求されても、そもそも無理」「プロジェクト後の責任だけを人事に押し付けるなんて無責任」などの声がありました。これでは人事部自身が変革の意義を理解していない、納得できていない状態のままプロジェクトがスタートし、終わる。そして同時に「後は人事部、よろしくね!」と言われ、そこで初めて人事部の不満が爆発して、結局プロジェクト失敗に終わるのです。トップダウンによる人事部改革の失敗例は、例外がなくこのケースのようです。

 人事部の変革には経営陣と人事部との間の認識を一致させ、人事部自身に変革への意義、意欲、さらに覚悟を決めさせるプロセスが重要となります。このプロセスは手間も時間もかかりますが、ここで惜しみなく議論ができれば、変革への成功のチケットが得られでしょう。逆に、このプロセスを軽視してプロジェクトをスタートしても、求める終着点には到達できないかもしれません。

人事部が戦略的パートナーになる

 変革プロジェクトの目的は、人事部が“戦略的パートナー”になることですが、ではこれまで務めてきた役割はどうなるのでしょうか。
 人事部が“戦略的パートナー”に全面刷新するのかといえば答えは「いいえ」です。第5回のコラムでもご紹介しましたが戦略的パートナーとしての役割は人事部全体の半分です。
もし、仮に人事部に10名の要員がいたとします。その場合、5名が戦略的パートナーの役割、2名が組織・風土変革のエージェントの役割、2名が、人事管理のプロの専門家、そして1名が従業員のチャンピオンの役割という役割のポートフォリオを作る必要があります。これは一例で、実際は役割を兼務することもあると思います。まずは現状の人事部の要員の力量分析から始めなければなりません。ただしその前提条件として、人事業務サービスなどでアウトソースできる給与系機能(給与、賞与、年末調整、持株会など)や福利厚生などの運用は社内では行いません。

 まず、人事部の全機能、全サービスの洗い出しを実施します。著者の経験では、およそ700程度の項目となりました。たとえば、採用のキャリア採用では、①年間採用計画策定、②採用予算策定、③募集内容作成、④エージェント依頼、⑤書類審査、⑥一次面接試験……、このレベル(以下の表の中項目)で採用、教育研修、処遇、評価などの全機能、全サービスを洗い出します。
 これらの項目ごとに、現在の役割を当てはめていきます。
以下の分析表は、現在の状態と、3年後の変革終了後の“ありたい姿”に向かっての各年の遷移を設定したものです。A、B、C、Dの表記は、表の下に解説しています。また、外部委託はアウトソースを意味しており、社内では行いません。
 この事例は、著者がGEのグループ企業の人事部変革プロジェクトのリーダーとして実際に携わった時のものです。
人事部が戦略的パートナーになる

 外部委託(アウトソース)をする場合、社内と委託会社とのパートナーシップが必要です。これが形成できないと、人事部が戦略的パートナーとなれないこともあります。役割のポートフォリオを作成した内容に合わせて、3年後の役割の比率を検討しなければなりません。戦略的パートナーの役割を5割と設定したなら、3年後の役割を整理して5割になっていなければなりません。そうならない場合は、特にCの人事管理のプロの専門家の比重を検討します。アウトソースできるものがないかも併せて検討していきます。

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