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社員の強みを活かすタレントマネジメントの本質

第10回  人事部の変革

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 前回はタレントマネジメントを検討する際、人事における問題の現状認識を深めるために、人事課題を整理し理解し、特に重要な3つの課題を挙げました。そしてこれらの課題の原因に、人事部が関わっていることを理解しました。
 経営戦略を実現させるための人事戦略が策定できない、人財マネジメントの仕組みを現場任せにしているなどの課題は特に深刻と言えます。

 今回は、人事部が新たな役割や使命を果たすための人事部の組織変革について解説します。これまで人事は聖域だったためか、経営による変革のメスが最後まで引き延ばされた可能性がありますが、それももうとうに限界点を超えているのです。

経営環境の変化による人事への影響

 今から、20~30年前、人事部に対する期待といえば、新卒採用や入社手続き、教育研修、給与・賞与計算、退職手続きや労務管理といった「人事業務のスペシャリスト」でした。そして、これらの事務処理を完璧に行うことが最も重要な任務であり機能でした。人の使い方(配属や異動、昇格、出向など)は人事部ではなく経営の仕事で、経営資源である「人」は経営会議で決まり、その経営会議の中に人事業務のスペシャリストは招待されることはありませんでした。人事部の仕事は、そこで決まった人事の事務手続きを漏れなく確実に行うことだったのです。

 しかし、時代の変化は加速し、グローバル化によるグローバル経営や海外事業所を含む連結経営、M&Aによる企業成長の戦略が加わり、経営陣だけで人事を決定することに限界が訪れました。
 つまり、国内の親会社だけでなく連結会社を含む全体最適化やM&Aによるシナジー効果を出すための資源の再配分が必要となったのです。
 たとえば、商社のビジネスモデルといえば貿易が主流でしたが、今では貿易をやりながら、事業の軸はM&Aを基本とした事業投資へとビジネスモデルをシフトしており、これまでの貿易の人材要件も成功事例も社内では通用しなくなりました。
 このような経営戦略による経営の選択と集中が、新たな人材要件を生み出し、人材の活用もグループ企業全体に及ぶようになったのです。また、人材の流動化も加速し、経営陣だけで人材活用を戦略的に行うことが不可能になってきたのです。この解決策に、人事部に対する新たな役割や責任が期待されるようになったのです。しかし企業によってはこの役割を人事部ではなく経営企画部に任せるところもあるようです。この判断の材料は「人事部にはこの責任は重すぎる」「そもそも人事部には無理」という気持ちが働いたのではないかと思います。

人事部の新たな役割を自覚し、役割を見直す

 著者は、仕事上、多くの経営者の方とお会いする機会があります。そうした時に、自社の人事部についてお伺いすると、おおいに変革を期待していることがわかります。しかし一方で、人事部が自力で変革をすることは不可能だと考えている方も少なくないようです。その主な理由としては、人事部に新たな役割を説明しても、その本質を理解してくれない、できない理由(現状業務でいっぱいで人がいない、変革を起こせる人材がいないし、スキルや経験、ノウハウもない……など)ばかり並べる、などが挙げられます。

 同じような理由で、海外企業でもはじめは変革が難航しました。現在は見事に変革を遂げた欧米の優良企業でさえ、最初からうまくいったわけではありません。(これらの変革の歩みを第5回のコラム「経営戦略に必要な人事部とは」でご紹介しています)
 変革に適した人材もノウハウもない中、そうした企業を突き動かしたのは、期待されている役割がこれまでになく重要で、遥かに高度化されたものであること、そしてこの役割を務めることができない人事部は不要とされると理解したことです。これにより “変革への覚悟”ができたのだと分析をしています。

 変革への覚悟は、経営陣と人事部とのタウンミーティング、ワークアウトを何度も繰り返して形成されてきました。第2回のコラム「分離された経営戦略と人事戦略の実態」でも解説しましたが、そもそも経営と人事部との間に壁があり“戦略的パートナー”の言葉の意味や役割に大きな乖離があります。経営と人事部との間に、共通言語がないので、まず共通言語を作るために何度も議論を繰り返し、“戦略的パートナー”の定義にブレのないものにしていきました。そして“戦略的パートナー”として、第5回のコラムに記載した8個の重要任務を執行することを共通言語として決めることができたのです。

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