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社員の強みを活かすタレントマネジメントの本質

第2回  分離された経営戦略と人事戦略の実態

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 前回は、タレントマネジメントの中でも“求める人材要件”は、経営目標達成に必要で重要な要因であることを理解しました。
 求める人材要件を作る時、人事の協力が必要となります。今回は、経営と人事との関係について、理解を深めていきたいと思います。

経営と人事の間に厚い壁がないだろうか

 さて、経営にも人事にもそれぞれの戦略があり、その戦略に対する思いは、経営も人事も同じ思いであることは間違いありません。
 たとえば、企業を取巻く環境が変われば、計画の変更や戦略の変更はあたり前、と思っています。変更することへの意識も意欲も、驚くほど、経営も人事も同じ思いです。
 しかし、問題なのはここからです。

 変更をどのような方法で、どのような手段で、どう対応するか、と言う具体的な話になったとたん、経営と人事の間に非常に大きな温度差や厚い壁、深い溝を強く感じることがあります。

 この原因がどこにあるのか、経営と人事に聞いてみました。

 まず、経営の人事に対する言い分です。ちょっと冷静に聞いてみることにしましょう。

-人事は、いつも人事のことしか見ていない。もっと視野を広げて全体を見てほしいものだ
-人事は、現場のことをちっとも理解していない。そもそも現場に行ったことがない。だから現場とまともにコミュニケーションが取れない
-人事がこれまで、どこかの海外拠点に行ったことはあるの? そんなの聞いたことがないね。英語ができる人もいないしね
-人事って「ひとごと」って書くよね。いつも、ひとごとにしか思っていないし…
-部下の問題にしても、人事は現場の上司の問題として片付けているし…人事ってやっぱり、ひとごとだね
-また人事が勝手に制度を変えた。やっと慣れたと思ったのに…いい加減にしてほしい
-制度のグローバル化への変革を求めても、いつもできない理由ばかり聞かさせてうんざり。できないのならできないと、ハッキリいってくれたほうがスッキリする
-制度変革をしても、結局、制度を変更しておしまい?
-労務管理だけは強い。これって社員でなくてもできるよね
-人事部が一番ガラパゴス化で、一番変われていないよね
まだまだ出そうでしたが、もう充分でしょう。

 一方、人事の経営に対する言い分も聞いてみました。

-経営陣は、誰も人事のことを理解していない
-いつも目先の利益ばかりで、戦略的に人を育てようとする気があるんだろうか
-長期的戦略がないからいつも場当たり的になって、結局、大変な思いをしているのは人事ばかり
-急に変更しろと言われても、それなりの手順が必要だというのが分かっていない
-すぐできるよね、と簡単に言うけど、何にも理解していない
-人件費が高い、コストをもっと削れ…。これ以上、何を削れっていうの?
-予算カットはいつも研修費。だから人材が育たない
-そもそも人事に来たくて人事に来たんじゃないんだ

 こちらも、まだまだ出そうです。
 著者は、人事部長の経験も役員、副社長の経験もあるので、いずれの言い分もよく理解できます。

 それにしても、この違いは何から来ているのでしょうか。

経営と人事との間に共通言語が必要

 「経営理念への理解は、両者共に一致している。行動方針も一致している。企業価値観も一致しているように思える」と思っても、どうもビジョンが怪しい。さらに、経営計画の理解となるともっと怪しい、と言うことがわかりました。
 一致している点と違っている点が理解できたので、さらにこの厚い壁の原因を調べてみると、経営と人事との間に共通言語がそもそもないことが分かりました。

 共通言語とは、何でしょうか。

 みなさんは、「アフリカでの靴の営業」の話を聞いたことはありませんか。
 靴を売りにアフリカへ行った二人の営業からの報告です。
 最初の営業からは、「現地は全員、裸足です。靴が売れるとは思えません。今から帰国します」という報告がありました。ところが二人目の営業からは「現地は全員、裸足です。靴が大いに売れると思います。また報告します」と連絡があったのです。

 同じ現地で、同じように裸足を見たのに、全く違う理解、対応をしています。
 この違いはどこからくるのでしょうか。
 いろいろな理由のなかでも、まず「何のために営業をしているのか?」「営業の使命と役割とは何か?」を本人がどこまで理解し、どのような価値を感じているか、ではないでしょうか。

 人事が理解している「人事の役割」と、経営が期待している「人事の役割」が、そもそも食い違っている場合がありませんか。 
 経営と人事が同じモノを見ても、理解が違えばその価値も対応も違ってきます。つまり理念などの上位の思いは、経営と人事に理解の差はなくても、それを具体的にしていく過程のどこかで、共通言語がないためそれぞれがバラバラな思いによる行動に移ってしまうのです。

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