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社員の強みを活かすタレントマネジメントの本質

第1回  タレントマネジメントは必要か

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事業目標と成長目標を実現させる人材要件を明確にする

 タレントマネジメントも「人」を、短期視点と中長期視点の両視点で、バランスよくマネジメントする思想があります。

 経営におけるマネジメント、すなわち、経営目標によるマネジメントですが、これには、大きく二種類あります。ひとつが、毎年達成しなければならない事業目標です。そして、もうひとつが、長期的な事業の成長目標です。

 これらの目標の内容は、明らかに違います。
 毎年、事業目標を達成し続けていくこと、これがイコール、事業の成長目標ではないと思います。

 これらの二種類の目標、すなわち、事業目標と成長目標を実現させる人物は、同じでしょうか。

 企業によっては、同じ人かもしれません。企業によっては、違う人かもしれません。
大切なのは、事業目標を達成してくれる“求める人材要件”をどこまで明確にできるかです。そして、成長目標を達成してくれる人の“求める人材要件”です。

 求める人材要件は、次の3つの軸で検討し、明確にしておくことが大切です。 
①性格、資質 
②経験、資格、能力、スキル、コンピテンシー、知識 
③価値観
です。
 たとえば、性格では、フットワークよく積極的に行動が取れる性格。能力では、顧客対応力や問題解決能力。経験では、変革の経験者。価値観とは、やる気の源泉の要因など、といった要件です。

 これらの人材要件を定義し、それらの項目に、社員別の現状データ加えます。これを、統合的に一元管理することによって、経営に必要な「人」が、存在しているのか、それは、誰なのか、どこにいるのか、と言うようにタイムリーに確認することができます。これにより、個人の適性や強みを活かした適材適所の配置、戦略的で計画的な配置が無駄なく効果的に行うことができます。 

 さらに、精度を高めるために、タレントマネジメントでは、その他の付加情報(人事評価データ、育成計画と履歴データ、社内異動履歴データ、キャリアパスなど)を加えます。
 これによって、以下の二大目標を実現するマネジメントツールとして活用することができます。

・1年、または、数年先の事業目標を実現する「人」の適任者をタイムリーに確認し、戦略的に、計画的に配置するマネジメントができる。
・長期的な成長目標に貢献してくれる「人」、次世代リーダー・後任者の適任者を確認し、計画的に育成するために必要な要件を洗い出すことができる。

タレントマネジメントはどんな企業に必要か?

 タレントマネジメントは、経営における「人」のマネジメント、人財マネジメントを実現させるマネジメントツールとして必要です。 ただ、すべての経営に必要だとは思っていません。

 企業の規模がまだ小さいころは、経営陣の頭の中には、社員のデーターベースが、常にフル稼働し、全社員の名前と顔が一致しており、適切な対応ができたと思います。この頃は、人事部も不要だったでしょう。このような環境の企業には、タレントマネジメントは必要ありません。

 やがて、社員数が増加し、さらに、海外拠点が置かれ、グローバル企業へと成長し、同時に、M&Aやグループ経営へと拡大してくると、いかに経営陣といえども、頭の中のデーターベースは限定的にしか稼働できなくなります。
 こうなると、ある海外拠点の「人」は全く知らない。あるグループ企業の「人」も全く知らない。このような経営では、活躍している「人」は、常に同じ人物、いつも負担の多い仕事をしている「人」も、常に同じ人物になっている可能性があります。

 「人」が大切と説いている経営陣が、グローバル経営になり、グループ経営になり、そこにいる「人」を十分に知らないため、「人」がフルに活かされなくなることがあります。このような実態を把握している経営陣は多いと思います。でも、何か限界を感じているもの分かります。

 優秀な「人」が、グローバルのどこかにいても、優秀な「人」が、グループ企業のどこかにいても、そこでしか活躍できないのです。
 ここに、タレントマネジメントによる人財のマネジメントの最大の必要性があります。

 このような環境にある企業では、タレントマネジメントを行わなければ、経営にとってみても「人」の活用も限定的で、社員にとってみてもその活躍の機会が限定的となるでしょう。
 つまり、グローバル経営、グループ経営の企業には、タレントマネジメントは必須です。逆に、グローバル経営もグループ経営もしていない数百人程度の企業には、タレントマネジメントの必要性、利便性はあまりないかもしれません。将来に備えるためでしょうか。

 タレントマネジメントを具現化するためには、求める人材要件を明確に決めておくことが重要です。これは、実は、思ったほど容易ではありません。

 今、すぐにほしい「人」の要件は、すぐに決めることはできます。直面している問題やニーズが明らかになっているからです。また、たとえば、1年後の新規事業の立ち上げにむけてのプロジェクトメンバー、2年後のグローバル経営に向けて、海外支店の支店長の要件なども比較的に、容易でなくても、明確に決めることはできます。

 しかし、企業の成長目標に必要な人材要件は容易ではありません。5年後のビジョンにむけて、その求める人材要件、さらに、10年後の事業後継者の要件となると、簡単には要件を決めることはできません。それは、5年後、10年後の企業の状態が分からないからです。分からないからと言って、無対策では経営マネジメントの先延ばしをしているにすぎません。

 企業は成長していきます。
 その成長の段階には、立上げ・創造段階から始まって、拡大段階、安定成長段階へ、そして、衰退段階、回復段階というそれぞれの段階があるとすると、それぞれの段階で、必要となる人材要件は違ってくるのではないでしょうか。
 5年先、10年先を見たとき、
「企業はどこの成長の段階にいるのか?」
「その時の状態を想像することができるか?」
 成長の段階や状態の仮説を検討するのは、経営の責任です。仮説が立てられれば、人材要件も決めることは可能となります。 

 しかし、経営陣だけで具体的に決めることは困難です。かと言って、人事に丸投げしても機能しません。人事の意識や役割を、まず、確認する必要はありますが、いずれにしても、人事を巻き込まなければなりません。

 経営と人事との関係について、次回の第2回で詳しく理解していきたいと思います。

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プロフィール

戦略人財コンサルタント代表 社会保険労務士 鬼本 昌樹 氏

戦略人財コンサルタント代表 社会保険労務士 鬼本 昌樹 氏

25年以上のIT、人事、経営の現場経験を通して独立。
オラクル、GEキャピタル、商社、大手通販などの米国企業、日本企業で人材開発部長、人事部長、役員、副社長を経験し、変革のリーダーとして、組織改革、制度改革、意識改革、人事部変革に貢献し、ベストマネジメント・アワードなどを受賞する。

現在、人事コンサルタントとして、
・タレントマネジメント
・パフォーマンスマネジメント
・デベロップメントマネジメント
を強みとする。
さらに、米国で、行動心理学をマスターし、人が動く仕組み作り、マネジメント作り、そして、人作りに貢献している。日本企業、外資系企業、業界、規模を問わず、幅広くコンサルティング活動を行っている。

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