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事件は現場で起きている!複雑難解なインド法規制の実態に迫る

第3回  製造業者が工場完成までに直面する経理実務の実態を理解する

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「出資金を定期預金に預けて運用する場合に気を付けるべきポイント」

 製造業者がインドに進出する際には、土地や工場建設、そして、機械設備等への投資が必要となるため、当初の払込出資金額も相当に高額になるケースは多く見受けられます。一方で、インド法人を設立してから実際に工場建設のための投資をしたり、機械・設備に投資をしたりするまでには、一定の期間が空くため、多くの日系企業が資金的に余裕のあるこの空白期間を利用して、出資金を短期の定期預金で運用して利息収入を稼ぐというのが通例になっています。日本の定期預金の感覚からすると、注意を要するほどの利息収入を稼ぐことは期待できないため、経理実務上においてあまり論点にはなりませんが、インドでは例えば6ヶ月定期に預けると年利7.0~8.0%で運用できるため、利息収入も相当な高額になります。
 このような状況下において、日系企業の多くは「まだ工場も立ち上がっていないのだから当然に売上はないし、一方でさまざまな経費ばかりを支払っているので、いくら利息収入が多いからといっても初年度は当然に赤字だろう(法人税等の納税義務はないだろう)」と考えます。しかしながら、ここに落とし穴があるのが前回ご紹介した論点「事業の開始日(Date of Business Commencement)」です。つまり、インドでは事業の開始日以前に発生した費用は、原則、税務上の損金算入が認められていないため、工場が立ち上がっていない(事業がまだ開始していない)時期に得ている利息収入には、そのまま法人税等が課せられてしまうことになります。
 ここでさらに重要になってくるのが予定納税です。インドでは法人税の年間見積納税額に対して、以下のとおり一定割合を年4回に分けて納税する必要があります。
(法人税の前払いに当たります)
「出資金を定期預金に預けて運用する場合に気を付けるべきポイント」

 なお、上記の納付すべき金額が不足していたり、期限後に納税をした場合には、その延滞期間に応じて年利12%の延滞金利が課されます。つまり、上記のとおり「初年度は納税義務はないだろう」と思っていた日系企業が、年度末の税務申告時にふたを開けてみると、定期預金によって稼いだ利息収入全額に課税され、かつ、予定納税未納分に対する延滞金利まで追加で課せられるというダブルパンチを受けることになります。
 インドに進出したばかりの日系企業は進出当初1~2年は特に初めてことばかりで対応が後手に回りがちです。不必要な税金コストを負担することなく、かつ、資金繰りに不用意な負担がかからないよう事前にどのようなタイミングでどのような税金を納付する必要があるのか、また、税金コストを最小限に抑えるためにどのような取引スキームが最適か等、信頼できる専門家をうまく起用して、進出当初から十分な検討をしておくことがとても重要となります。

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プロフィール

Global Japan AAP Consulting Private Limited 代表取締役 田中 啓介氏

Global Japan AAP Consulting Private Limited 代表取締役 田中 啓介氏

京都工芸繊維大学工芸学部卒業。米国公認会計士。
税理士法人において中小企業の税務顧問として会計・税務・社会保険等アドバイザリーに約4年半従事、ナスダック上場企業において米国本社に対する財務報告業務や国際税務、ERPシステムを活用した経理部門シェアード・サービス導入プロジェクトを約3年経験後、30歳を機に海外勤務を志し、2012年から南インドのチェンナイに移住。当地インドで実務を深く理解し、かつ、長期的に日系企業のサポートができるコンサルタントが必要であると感じ、2014年10月に株式会社グローバルジャパンコンサルティングとAsia Alliance Partner Co., Ltdとともに当社を共同設立し、その後代表取締役に就任。これまで100社超の在印日系企業や新規進出企業向けに市場調査から会社設立支援、会計・税務・人事労務・法務支援サービスを提供している。
Global Japan AAP Consulting Private Limited

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