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女性が管理職になりたがらないほんとうの理由

第5回  女性だけでなく、全ての人材が活躍する職場にするために

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5 女性だけでなく、全ての人材が活躍する職場にするために

5 女性だけでなく、全ての人材が活躍する職場にするために

 ここまでお読みいただけた方には、この「女性の意識が低い問題」は、女性個人の人格的な問題ではなく、職場環境という経営課題であるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。しかし逆に言えば、経営課題である以上は経営努力で解決できる問題でもあります。そこで最終回では、どんな職場環境を作ればこの女性の離職やぶら下がりという問題を回避できるのかについて説明します。

■ポイントは、成長機会を奪わずに子育てと両立できる環境をつくること

 成人の能力開発の70%は、経験によってつくられると言われています 。そのため人材を育成するには、良質な経験を積ませること、とくに既存の知識や経験が通用しないタフな環境での経験を与えることが重要となります。管理職の育成も同様で、マネジャーが成長するためには「変革への参加経験」「部門の連携経験」「部下の育成経験」といった業務経験をすることで必要な能力を獲得していきますが、こうした成長に必要な経験に恵まれるかどうかを決定する最大の要因は「過去の経験」であり、加えて「本人の目標志向性」「上司からの支援」であると言われています 。つまり管理職としての能力を獲得するために必要な業務経験を重ねることができるかどうかは、過去にどんな経験をしてきたか、どのような目標設定をしているかに大きく依存し、さらに上司から支援をしてもらうことが重要なのです。

 ところが、多くの女性従業員は、出産後に復職する際に短時間勤務制度(時短制度)を利用します。これは3歳に満たない子を養育する労働者を対象に短時間勤務を認めるもので、子どもが1歳の正規雇用継続者の3割が利用していると言われています 。しかし時短制度の利用者が増えているにも拘わらず、時短制度利用者とフルタイム勤務者との業務配分と評価、どのように業務のフォローをするのか、労働時間の違う従業員がいるときの情報共有の方法など、管理上のノウハウはまだまだ確立されていません。その結果、管理者は誰がやってもあたりさわりがない業務、責任範囲の小さい業務を時短制度利用者に割り当てる傾向があり、これを「マミートラック」と呼びます。これは決して嫌がらせではなく配慮の結果である場合も少なくないのですが、いったんマミートラックにのった女性は適切な業務経験を積むことが出来なくなって成長機会を失ってしまうため、その以降の能力開発やキャリア形成が難しくなります。つまり女性は子育てという制約を抱えることで一時的に成長に必要な業務経験を逃してしまうことが多くなりますが、過去の経験に基づいて新たな業務経験を与えられるためそのまま学習機会を逃し続け、適切な実践知やスキルを獲得できないまま年齢を重ねることになっていくのです。

こうした経験による学習機会を逃しやすい女性を育成するためには、制約を抱えながらでも働きやすい職場環境をつくるための両立支援と、成長のための学習機会を提供する育成支援との2種類の施策が求められます。家庭を顧みない働き方をすることが前提であれば育成支援だけでもよいのですが、そのような職場環境と直面した女性は就労意欲を下方修正して離職やぶら下がり化しますので、女性を活躍させるためには両立支援が同時に必要となるのです。


《次ページに続きます》

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