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女性が管理職になりたがらないほんとうの理由

第4回  「ぶらさがりワーキングマザー」が生まれる構造

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 また第1回でも述べた通り、仕事への意欲と育児への意欲は相反するものではないのですが、投下できる時間は完全に競合してしまいます。たとえばこれまでは残業を厭わず仕事をしていた女性でも、幼い子どもがいると保育園のお迎えから食事、寝かしつけといった育児タスクが18~21時に集中するため、この時間帯に自宅にいられるよう仕事を切り上げて帰宅しようとします。客観的には早く帰りたがることで仕事への意欲を失っていると見えるようですが、「夕方の時間帯は育児タスクに充てたい」と「就業時間を短くしたい」はイコールではありません。夕方は早めに自宅に戻っても、こどもが寝たあとの時間や早朝を仕事に充てられる環境さえ提供してもらうことが出来ればかなりの業務量をこなせたりするのですが、そうした時間や場所の柔軟な働き方を認めてもらえない場合は単純に労働時間の短縮になるため、産前と同じだけのアウトプットを出すことは難しく、効力予期が低下して就労意欲を失っていくと考えられます。

■「どうせ評価されない」の構造

 もう1つ、就労意欲に影響を与える自信については、行動をしたときに望ましい結果につながるかという「結果予期」の面もあります。もし自分が適切な行動をしたとしても、その行動が適切な成果につながらない、正当な評価を受けないと思うと人は行動を起こす気にはなりません。しかしこれまでの評価制度は主に無制約に働く人材を前提としたものであり、時間等の制約を抱える従業員には適合していません。そのため残業ができない限りはいくら頑張っても適切に評価されないのではないか、しょせん自分にとっては負け戦なのではないかと判断した女性は、早々に勝負から降り、就労意欲を失って必要最低限の業務だけをこなす「ぶらさがり」になっていきます。これはまさに結果予期の問題です。

 企業からの評価だけでなく、同僚や部下・後輩からの評価も影響します。管理職としてのリーダーシップは一般的に男性的な行動が評価されるのですが、この男性的なリーダー行動を女性が行うと、全く同じ行動であるにも拘らず周りからの評価が低くなるということが分かっています。例えばある難しい意思決定を行うために周りの反対を押し切るというリーダー行動を、男性がとった場合は「決断力がある」という評価になるのに対し、同じことを女性がやると「強引だ」「周りを顧みない」という評価になってしまうのです。かといってこうした行動をしなければしないで、「管理職なのに決断力が弱い」という評価になります。女性リーダーは、男性リーダーに求められる資質だけでなく、優しく協調的という女性らしさも同時に求められ、その2つの相反する期待を同時に満たさなければ周りから評価されません。そのため女性管理職は、「常に」男性管理職よりも周りから低く評価されてしまうのです。このような状況では必然的に女性の結果予期は高まりませんので、リーダーポジションを目指す女性は少なくなることは当然でしょう。これが、「女性は意識が低い」と言われる状態なのです。

 職場環境が原因で、女性が効力予期と期待予期を低下させ、結果的に就労意欲を下方修正してぶらさがっていく問題は、このような構造になっています。

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プロフィール

静岡県立大学/ワークシフト研究所<Br> 国保 祥子 氏

静岡県立大学/ワークシフト研究所
国保 祥子 氏

経営学博士。静岡県立大学経営情報学部講師、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科非常勤講師。外資系IT企業での業務変革コンサルティング経験を経て、慶應ビジネススクールでMBAおよび博士号を取得。エーザイ株式会社、JA全中、静岡県庁、石川県庁、インキュベーションオフィス等の経営人材育成プログラムの開発および導入に従事。Learning Communityを使った意識変革や行動変容を得意分野とする。2011年から地域の社会人と学生が共に地域の課題を検討する「フューチャーセンター」を、2014年から育児休業期間をマネジメント能力開発の機会にする「育休プチMBA勉強会」を運営している(事務局 ikukyumba@gmail.com)。1歳児の母。

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