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好不況にびくともしない強い事業構造をつくる経営

第2回  縮小市場の中で、高業績をあげる「社長の戦い方」

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 第1回では、目指すべき4つの代表的モデル

①定期回収モデル
②一位連合モデル
③盤石財務モデル
④ビルトインモデル

のうち、①の定期回収モデルについてみてきた。今回は、つづいて②の一位連合モデルの話である。この一位連合を実行するには最低でも5年~10年以上の長期戦略のもとに社長の執念が必要になる。

 大企業の事例では、一位連合のケースはわかり易い。例えば、最近セブン&アイHDグループのお店に行くと、金の○○とか、セブンプレミアム~というPB(プライベート・ブランド)をよく見る。実際にすごく売れていて、従来あったメーカーの看板商品を探すのが大変なくらいに店頭を席巻している。
 原材料調達+製造+流通…どれをとっても一位企業(もしくは直系子会社)が協力し合って定番のロングセラー商品のPBを作っている。ひと昔前のPBであれば、同じような商品でも値段相応の味であったりして、パッとするものではなかったが、トップ企業が集まれば、2番手3番手が連合を組んでも正直勝負にならない。ましてや、原材料に限りがあったり、高品質の材料は一位企業の購買シェアが高かったりするのは当たり前であり、味が勝負の商品であれば高品質材料を押さえた会社が勝つ。

 では中堅・中小はどうするか?
 まず「3の法則」の視点から自社の市場とその前後の市場(販売先・仕入先)を考えて、今後数年間の市場の動きを予測してみて頂きたい。
 「3の法則」とは、市場が成熟化してくると上位シェア3社に売上が集中しトップグループを形成し中間がいなくなり、小規模ながらすごい特徴を持った商品や地域に超密着したローカル企業が生き残るという二極化構造の市場に収斂することを意味する。
 たとえば東海地区にある精密部品の企業は決して大規模ではないが、超精密の加工技術を保持し、世界最高性能の設備を入れている。最高の設備には当然最高の技術者が技術習得のために時間を相当に使用する。その人材育成の時間は中小企業にとっては厳しい投資となるが、3番手4番手が伸びるチャンスでもあり、結果、国内最高の技術を手に入れながら技術陣の層も厚くなっていく。納め先のメーカーは、日本はもとより世界でも1、2を争うほどの大企業であり、仕事の絶対量はそう簡単に減るものではない。
 それでも景気の波は確実にあるし、円高円安の為替の波も企業業績を直撃する。だから一位連合をある業界で作った中小企業は、他業界のトップグループへの新規取引を狙い、社長自らが時間をかけ、人脈、紹介、コネを総動員し正面突破も必ず実行し新業界に食い込んでいく。
 景気に左右されづらい医療分野、食品分野、ヘルスケア、最近では鉄道などへ進出する企業も多く、景気変動へのヘッジをかけている。大手との新規口座開設は、3年なら早い方であり、5~10年の長期戦略の覚悟がいる。しかしその経営効果は、長期間におよび、自社の質的向上を維持しつづければ、事業承継後も手中にすることができるなど、計り知れない。

 ③の盤石な財務基盤は誰もが想像できるであろう。定期収入が入る資産(ストック)の形成にも技術の品質を世界トップレベルに保つ機械の購入に関しても、強いバランスシート、厚い手元資金、豊富な財務知識がないと、わかっていても実行できない。
 アベノミクスの成長戦略の一つ生産性向上への新規設備投資の即時償却(初年度に全額減価償却)にしても、旧設備の除却での特損処理にしても、経理の知識ではなく財務の実務知識の差が数千万、億単位の資金の差となって手元資金に残ってくる。
 医者なら脳外科、消化器系、心臓…と専門があるように法人税、自社株、不動産、海外税務と税理士にだって得手不得手がある。ましてや税務調査に強い税理士もいるのが当然で、億のお金を管理するなら、得手不得手を見極めて複数人の税理士を依頼することぐらいはしたいものだ。
 社外流出という観点から経営を考え、手元資金を潤沢にしておき、いざチャンスと見たときに投資ができ、どこまでなら万が一の失敗の時でも屋台骨を揺るがすほどではない、返済もしくは損金処理できるかを冷静に数字で判断すべきである。
 私の顧問先企業では、5年先までの売上利益計画と資金計画、目標バランスシートを作成し、好調時、業績不振の場合の計画を立て金融機関にも提出し、月毎の業績報告、クオーター報告を怠りなくやっている。多くは実質無借金で経営しているが、手元の資金がうすくなる場合でも半年前から相談していれば全く問題もないし、金利もかなり有利な条件で引っ張っている。
 わずかな金利差、支払利息金額かもしれないが、その分、収益力は高くなっている。
財務を強くするにも時間はかかる。時間がかかるということは、早く着手したもの勝ちということだ。そしてキャシュリッチの企業は、リーマンショックのような状況に陥った時に、慌てることなく嵐が過ぎるのを待つことができる。財務が弱く、資金の知識が不足していると、苦しまぎれに社長の本能として、売上増大で難局を乗り切ろうとするそのために値段を下げて売上を作りに行くので、粗付加価値率が当然下がる。市場が落ち着いたときに値段を戻そうとしても一端崩れた値段はなかなか戻せない。この流れに皆のみ込まれてしまう。
 財務は強い企業の原因でもあり結果でもある不思議な要素である。

 ④のビルトインモデルについては次回第3回でお伝えしたい。
 それとともに今どきの若手社長が見落としがちな、大切な経営視点がもう一つあるので、それを最後にお伝えする。

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プロフィール

日本経営合理化協会 常務理事 作間 信司 氏

日本経営合理化協会 常務理事 作間 信司 氏

 幹部や社員が社長の意図を汲み取り実行に移す仕組みを導入。常に、現場第一線で指導し社長と幹部・社員の壁を取り払うパイプ役として「全社で稼ぐ体勢」づくりに奔走。
 1983年、日本経営合理化協会入協。事業の企画・立案を担当する傍ら、理事長牟田學の薫陶を受け、全国の中堅・中小企業の経営相談に携る。以来30余年の豊富な指導経験からオーナー経営者との親交が広く、その親身のコンサルティングに多くの社長が全幅の信頼を寄せる。
 社長塾「地球の会」「事業発展計画書作成合宿セミナー」などの講師、田中道信氏の「会長業の実務と心得(CD)」の聞き手、社長のための経営情報誌「月刊CD経営塾」の番組ナビゲーターとして活躍中。
ホームページ:日本経営合理化協会

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