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好不況にびくともしない強い事業構造をつくる経営

第1回  “負けない経営”こそ社長がめざす最強の経営

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 世の中にはいろんな社長がいらっしゃる。寸暇を惜しんで一生懸命頑張っている社長が、必ずしも強い経営をしているとは限らない。逆に、いつ仕事しているのだろうと思うくらいの社長が、すごく儲かっている会社を経営していたりする。
 この違いは一体どこから生まれてくるのだろうか?

 一つには、好不況の波の厳しい状況下での経営のあり方。
 もう一つは、安定的に売上が上がる仕組みができているか?

 まず一年の経営を考えたときに、12か月の星取りを考えてみてほしい。12連勝(黒字)すればこれが一番いいに決まっている。しかし、そうは問屋が卸してくれない。
 季節変動や2月8月に代表される、商いの薄い月は多くの業界でみられる。例えば2か月赤字の月があった場合、10勝2敗で決して悪くはないように見える。しかし経営を考えると、12か月でソロバンを取って固定経費を払っているから、2敗の月の赤を埋めるために2か月分の黒字を使わなければならない。よって一年間を考えると10勝ではなくて8勝で一年の経営を回さないといけない。
 2か月が赤字ではなく、トントンの引き分けだと10勝で一年を回せる。
 強い会社は、季節変動の激しい商売には手を出さないし、閑散期の仕事を逆につくるか、安定的な仕事で引き分けにできる状態に経費を合わせて経営している。

 3~5~7年と景気の波が上下するのも同じ考えで、ボトムの時に、いかに負けない工夫をするか! ここが一番大切で競争相手との差も不況期についてしまう。
 好景気の時は自社も順調だがライバルだって業績を伸ばしている。本当に強い会社は、不況期に新商品を投入したり、新しい設備投資をして競争力を強化したり、得意先構成がしっかりしているので落ち込みを最小限に抑えたり、下位企業を合併して大きくなったり、負けないことと、競争相手に差をつける準備を好調時に仕込んでいる。
 景気の循環サイクルは業界である程度わかっているのだから、誰だってできるはずなのに、好調時にお金をキッチリ残して、次の準備をして不況期を待っている社長は少ない。
 社長が本当に知恵とエネルギーと時間を使うところはこういう要所で、傍目には一生懸命仕事しているように見えなくても、押さえるところはしっかり押さえ、冷静に不況期を乗り切っているし、一位固めを着実に実行している。

 もう一つの安定売上の仕組みづくりであるが、何といっても社長が望むことは、明日、来月の売上が予定通り上がってくる状態を作っていることである。さらに、社長が希望する粗付加価値率がキープできる条件を事業構造の中に組み込まれていれば盤石である。経営環境の変化、自社の競争力が落ちていないかの確認も、この粗付加価値率が下がることによってイエローカードとなるので、毎月確認をしていて欲しい。

 強い経営をつづけている会社は個性的なビジネスモデルを作っているケースが多い。目指すべき代表的なモデルが4つある。ただし、単独で機能する場合と事業構造に中に組み合わせで入っているケースも多く、社長が各モデルに詳しくなって応用しなければならない。そうすると競争相手に、そう簡単にキャッチアップされることはない。

①定期回収モデル
②一位連合モデル
③盤石財務モデル
④ビルトインモデル

 まずは①から。
 代表的なビジネスは会社内にも家庭にもたくさんあるのでわかり易い。コピーのパーチャージ、駐車場、アパート、オフィスコーヒー、携帯電話の料金も、リース業もこのモデルだ。銀行からお金を借りていれば支払金利も我々にとってみれば経費だが、銀行サイドに立てば1年365日、休みなく働く集金マシーンである。住宅ローンも全く同じ。ベースになるストックを積み上げていくと岩盤のように強固な収益基盤が出来上がっていく。月額回収が会社の資金繰りから見れば好都合である。
 会社の事業全部といわないまでも、一部門でも二部門でも毎月の安定収入があるのは心強い。設備投資系やプラントなどのメーカーであれば定期メンテナンスや法定点検がこれに相当する。自動ドアやボイラー、ポンプメーカーもこの収益モデルだから、メンテ部門が強固な会社は財務も強固になっていく。

 業種によっても安定度に強弱があることは先の3.11で味わった。
 いくつかの店舗展開をしている会社では、地震直後からニュースが流れはじまると直接の被害エリアでなくても、さすがに外食事業の業績は数ヶ月低迷し、ネオンの灯りも消え街自体が暗くなっていた。しかし学習塾に関してはほとんど影響なく粛々と生徒さんが勉強に来る。
 確かに学習塾は飲食や物販と違い、行列ができるような大繁盛もないので大儲けの醍醐味はないが、安定という社長にとっての一番の安心をもたらしてくれる。業種ミックスも重要な経営戦略であり、社長が知恵を使う領域である。
 定期回収モデルについて、ご理解いただけただろうか、次回は②一位連合モデルについて説明していく。

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プロフィール

日本経営合理化協会 常務理事 作間 信司 氏

日本経営合理化協会 常務理事 作間 信司 氏

 幹部や社員が社長の意図を汲み取り実行に移す仕組みを導入。常に、現場第一線で指導し社長と幹部・社員の壁を取り払うパイプ役として「全社で稼ぐ体勢」づくりに奔走。
 1983年、日本経営合理化協会入協。事業の企画・立案を担当する傍ら、理事長牟田學の薫陶を受け、全国の中堅・中小企業の経営相談に携る。以来30余年の豊富な指導経験からオーナー経営者との親交が広く、その親身のコンサルティングに多くの社長が全幅の信頼を寄せる。
 社長塾「地球の会」「事業発展計画書作成合宿セミナー」などの講師、田中道信氏の「会長業の実務と心得(CD)」の聞き手、社長のための経営情報誌「月刊CD経営塾」の番組ナビゲーターとして活躍中。
ホームページ:日本経営合理化協会

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