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言葉がけの改善で、部下と組織を強くする

第6回  ポジティブな言葉がけで、能力を発揮しやすい状態を作る

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 最近、教育研修の分野で「リソースフル」という言葉が注目を集めています。リソースとは『資源』であり、人間について語る場合は、誰もが内に秘めている『能力』を『資源』に例えます。

 つまり、『資源』が豊富に出てくる状態になぞらえて、社員が『能力』をいかんなく発揮している様を表現しているのです。従来、教育とは新たに知識や手法を足していくものであるとイメージしがちですが、「リソースフル」は人間がもともと保有している能力を引き出すという発想に基づきます。

リーダーの役割は、リソースフルな状態を創出すること

 新たなマネジメント手法を学びたいという意欲や、営業活動を成功させて認められたいという欲求、新しい商品を開発する発想なども、社員が保有している『能力=資源』であり、こうした能力を十分に発揮できる環境が整った組織では成果が上がりやすく、リソースフルな状態であるといえます。

 逆に、社員に対してリーダーが「学ぶヒマがあったら稼いで来い」と言って学ぶ意欲を削いだり、いくら営業活動を頑張っても頭ごなしに「そんな動き方じゃダメだ」と認めてもらえなかったり、新商品につながるアイデアを一方的に「商品化は無理だ」と潰されるという状態が続くと、組織全体が後ろ向きになり、リソースフルとは反対(アンリソースフル)の状態に陥ります。

 組織のリーダーは、営業成績を上げたり商品開発をスムーズに進めるといった成果を得たい時、具体的な活動内容を検討する前に、社員一人一人および組織全体をリソースフルな状態にしていくことが求められます。

 そのための有効な方法として考えられるのがペップトークであり、ポジティブな発想に基づく声がけで社員のモチベーションを上げていくことが、リソースフルな状態に直結します。

「問題解決」を阻害するアンリソースフルな状態

 何か問題が発生した場合、組織にとってマイナスの出来事であるため雰囲気が暗くなり、責任者の特定と処罰の検討が中心に進められ、肝心な解決策の案出が遅れるといったケースがよく見られます。

 このケースでは、明らかに組織内はリソースフルとは言い難い状態であり、社員が積極的に解決策を考えようという姿勢にはならないでしょう。それどころか、責任を押し付けられることを恐れて逃げるか、知らないふりを続けることもあり得ます。

 なぜ、このような事態が発生してしまうのでしょうか。それは、多くのケースで原因の追究や責任者の特定が“目的”と化しており、問題をどのように解決するかという方向性、すなわち“真の目的”が見失われているからです。

 たとえば、お客様からクレームをいただいた場合、原因追究の手法として「なぜ?」を繰り返して次のような会話が交わされます。

上司:「なぜ、お客様が怒っていらっしゃるんだ?」
部下:「イベント会場の手配が遅れたからです。」
上司:「なぜ、手配が遅れたんだ?」
部下:「イベントの出し物の調整に没頭して、手配を忘れていました。」
上司:「なぜ、そんな大切なことが抜けるんだ? やる気はあるのか?」
部下:「……」

 この事例では、クレームの原因が部下の“やる気”であるかのような結末になっています。この部下は、自身ではイベントの成功に向けて没頭するほど頑張っているため、ミスがあったとはいえ「やる気がない」と叱られるのは心外でしょう。おそらく「次回は必ず成功させよう」というリソースフルな気持ちにはならないと思われます。

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