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経営者として知っておくべき労働法

第5回  労働保険、社会保険の仕組み(労働保険編)

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労働保険は「労災保険」と「雇用保険」がある

労働保険は「労災保険」と「雇用保険」がある

 労働保険と一言でいいますが、中身は、労災保険と雇用保険のふたつがあります。
 いずれも法律で定めた要件を満たしている場合は、強制加入・強制適用となります。

 労災保険は、労働者が仕事中や通勤途中に負傷したり、業務が原因で病気になったり、不幸にして亡くなられた場合に、被災した労働者や遺族を保護するために必要な給付を行う制度です。
 もともとは、労働基準法で使用者の労災責任を担保するために設けられた制度ですが、業務上災害以外に通勤災害も対象とし、また、労働者に該当しない一部の者を特別加入させる制度を有しています。

 原則として1人でも労働者を使用する場合は労災保険の適用事業となりますので、労災保険に加入します。また、毎年保険料の申告と納付が必要となります。
 労災保険料率は、事業の危険度合いに応じて決められており、一番高いのは林業で6%、一番低いのは、その他各種事業といわれる一般の事業所で0.3%です。(H28年4月1日現在)

 労災保険から給付されるものとして、以下があります。()は通勤災害時の給付
・療養補償給付(療養給付)
 治療費、入院の費用、看護料、移送費など療養に必要なものをカバー
・休業補償給付(休業給付)
 療養のために休業し、賃金支払いがされない日の4日目以降から支給
 休業1日につき労働基準法の平均賃金に相当する給付基礎日額の80%支給されます(通常の給付60%+特別支給金20%)
・傷病補償年金(傷病年金)
 被災した労働者の傷病が、療養開始が1年6か月経過しても治らず、一定の傷病等級に該当するときは、休業(補償)給付をストップし、給付基礎日額の313日分~245日分の年金が支給されます
・障害補償給付(障害給付)
 被災した労働者の傷病が治ったときに一定の障害が残った場合、障害の程度に応じて障害等級1級~14級に分けられ、給付基礎日額の313日~131日分の年金、または給付基礎日額の503日~56 日分の一時金が支給されます
・遺族補償給付(遺族給付)
 労働者が業務災害または通勤災害により死亡した場合に、死亡当時にその労働者の収入によって生計を維持していた一定の範囲の遺族に対し年金が支給され、年金受給権者がいないときは、一定範囲の遺族に対して給付基礎日額の1,000日分の一時金が支給されます
・葬祭料(葬祭給付)
 葬祭を行ったものに対し、315,000円+給付基礎日額の30日分または給付基礎日額60日分のいずれか高い方が支給されます
・介護補償給付(介護給付)
 一定の障害により傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受給しており、かつ現に介護を受けている場合に、請求に基づいて支給されます
 現在、常時介護の場合で支出額の104,570円を上限として支給され(一律56,790円が最低保障額)、随時介護の場合で支出額の52,290円を上限として支給され(一律28,400円が最低保障額)ます
・二次健康診断等給付
 定期健康診断等で、業務上の理由による脳血管疾患、心臓疾患の発生に関する血圧、血中脂質、血糖、肥満度の検査項目の全てに異常所見があると診断されたときは、労働者の請求に基づいて二次的健康診断及び特定保健指導を受けることができます

過労死・過労自殺の労災認定

 最近の傾向として、過労死と過労自殺に対する労災認定があり、いずれも長時間労働など過重労働との因果関係が問題になります。

 「過労死」とは、脳血管や心臓等にもともとあった基礎疾患が、業務の過重負荷が誘因となって悪化し、その結果として、脳出血、くも膜下出血、心筋梗塞、狭心症などの脳血管疾患・心臓疾患が急性で発症する状態であり、これによって、死亡又は労働不能状態になることも少なくありません。

 これまで過労死の労災認定について、発症直前の精神的・肉体的な強度の緊張等をもたらす「異常な出来事」があった場合にのみ業務起因性が認められ、長期の残業による「疲労の蓄積」には業務起因性を認めませんでした。

 しかし、最近では発症前のおおむね6ヶ月間の長期の残業による「疲労の蓄積」にも過労死の業務起因性を認めています(H13.12.12 基発1063号)。
 上記通達では、①発症前1か月ないし6か月にわたって、1ヶ月に概ね45時間を超えて時間外労働をした場合は業務と発症との関連性が徐々に強まり、②発症前1ヶ月に概ね100時間、又は発症前2ヶ月ないし6ヶ月にわたって、1ヶ月に概ね80時間を超える時間外労働をした場合は業務起因性が強いという基準を設けています。

 精神障害者(うつ病)による自殺、いわゆる「過労自殺」の業務起因性についても、精神障害に関する業務災害の一般的認定基準として、
①対象疾病を発症していること
②対象疾病の発病前概ね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個人的な事情により対象疾病を発病したとは認められないこと
を掲げ、これに基づいて、さらに具体的な基準を設けており(H23.12.26 基発1226 第1号)、精神障害の発病(うつ病)が業務災害ならば、その者の自殺も「原則として業務起因性がある」としています(H11.9.14 基発544号)。
 最近では、うつ病による「過労自殺」の労災申請も増えています。

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