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経営者として知っておくべき労働法

第3回  賃金と処遇との関係

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法律でいうところの賃金とは?

法律でいうところの賃金とは?

 労働基準法は、「賃金」を「労働の対償」として「使用者が支払うもの」としています(労働基準法11条)。
 賃金、給与、謝礼、寸志などの名称は一切関係ないのです。
 「労働の対償」とは具体的な労働への対価という意味だけではなく、家族手当のような労働者の属性によって支給されるものも含めて、使用者が支給基準を定めて支払うものとされています。
 これに対し、使用者が道義的な観点から、任意に労働者に支払う「見舞金」や「お祝金」のようなものは賃金に当たりません。また、出張経費の精算や福利厚生目的の支給も賃金ではありません。もっといえば、顧客が労働者に直接支払うチップも使用者による支払いではないので、賃金に当たりません。

 ちなみに「労働の対価」に対して賃金を支給するとされていますので、労働が提供されなければ賃金は支払う必要はありません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。

 賞与も「労働の対償」として労働基準法上の「賃金」とされます。
 ただし、毎月支給される給与は、労働契約に基づいて労働者から労務を提供された後に賃金請求権が当然に発生するものとなりますが、賞与は当然に発生する権利ではないと考えられており、労働者が賞与の請求権を得るためには、就業規則での賞与支払い規定や、賞与支給が慣行されていたなどの根拠が必要となります。

 退職金も「労働の対償」であり、労働基準法上の「賃金」ではありますが、その性質は、賃金の後払いという意味と従業員の長年の功に報いるために使用者が支給するという功労報償としての意味を併せ持つものと考えられています。

賃金の支払い方にもルールがあった

 意外に知られていないのは、賃金の支払い方。
 法律では、賃金を支払うにあたり、以下のルールが設けられています。

1)通貨で支払う
 賃金は、通貨で支払わなければいけません。これは現物給付を禁止したものです。
 ただし労働協約(労働組合と企業とで締結する協約)に定めれば、定期券など賃金の一部を現物で支給することも可能です。
 実際には給与を現金で手渡しをする事はなく、口座振り込みで支払うのがほとんどかと思います。この給与の口座振り込みも、実は、本人の同意を得た上、本人の指定する本人名義の口座に振り込む場合に、通貨払いの例外として認められます(労働基準法施行規則7条の2)。

2)本人に直接支払う
 賃金は、直接労働者に支払わなければいけません。これは本人以外の代理受領を禁止したものです。
 代理人と違い、病気や長期出張中の労働者の配偶者に支払うことは可能とされていますが、実際には口座振り込みで支払われているのが通常でしょう。

3)全額支払う
 賃金は、全額支払わなければいけません。
 使用者は、例え一時的・便宜的にせよ、自分の判断だけで賃金を控除することはできません。
 賃金控除ができるのは、以下になります。
①所得税や社会保険料など法令によって認められているもの
②労働者の過半数を代表する者と書面の協定(労使協定、24条協定ともいわれます)を結んで一部を控除する(例、社宅・寮費の控除)場合
③賃金締切り後の欠勤や計算ミスなど、やむを得ない理由で賃金の過払いが生じたときに、翌月(又は翌々月)の給料から過払い分を控除する場合
 なお、労働者の自由意思による賃金債権の放棄と、使用者の一方的な相殺ではなく労使が合意で行う場合は、合理的理由が客観的に存在する場合に限り全額払いの原則に反しないとされています。

4)毎月1 回以上支払う
 賃金は、毎月1回以上支払わなければいけません。
 毎月1回以上ですので、月給はもちろんの事、週給、日給払いも可能です。年俸制は年単位で賃金額を決める制度ですが、その支払いは、少なくとも毎月1回以上にしなければいけません。

5)定期に支払う
 賃金は、一定の期日に支払わなければなりません。
 例えば、月給制で毎月月末の金曜日に支払うとするのは違法です。支払日が月によって異なるからです。
 定期払いの例外として、労働者が出産、疾病、災害、結婚、死亡などで1週間以上帰郷するときは、賃金支払日前であっても既に働いた分の賃金について労働者から請求があれば、使用者は支払わなければいけません。これを非常時払いといいます(労働基準法25条、労働基準法施行規則9条)。

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