就業規則の効力は違反内容により異なる
前述の就業規則を作成する義務・労働者からの意見聴取義務・届出義務・周知義務に違反すると、法律では罰則が定められてます。では、これらの手続違反があった場合に、就業規則自体の効力はどうなるのでしょうか。
この点について判例では、周知義務違反には、労働契約内容への効力がないと否定的に解釈され、労働者からの意見聴取義務違反や届出義務違反には、就業規則の効力自体を容認する傾向にあります。これは使用者の義務違反を理由に、労働者に不利益な結果を認めることが適当ではないとの判断によるものです。
この点について判例では、周知義務違反には、労働契約内容への効力がないと否定的に解釈され、労働者からの意見聴取義務違反や届出義務違反には、就業規則の効力自体を容認する傾向にあります。これは使用者の義務違反を理由に、労働者に不利益な結果を認めることが適当ではないとの判断によるものです。
労働契約からみた就業規則に与えられた役割
労働契約は、就業規則に2つの役割を与えています。
一つは、使用者が合理的な労働条件を定める就業規則を労働者に周知した場合、その労働条件が労働契約の内容になるというものです(労働契約法7条)。
つまり、就業規則に規定された労働条件は、よほど社会的にみて不合理でなければ、労働契約の内容である労働条件となります。
二つ目に、就業規則に定める労働条件は、労働契約との関係で、最低基準としての効力を有します(労働契約法12条)。これは労働条件のうち、就業規則に定めてある労働条件の基準に達しない部分を無効とし、それを就業規則に定める基準で補充することが認められているからです。
例えば、労働者が10人未満で就業規則がない事業場で、時給1,200円の労働者に時給1,000円にして欲しいという使用者からの提案に合意した場合、労働者の時給は1,000 円となります。
しかし、これが就業規則で時給1,200円と定められている場合には、このような合意は無効になります。この場合は、使用者が労働者と時給1,000円で合意したとしても、時給1,000円は就業規則に定める時給1,200円に達していないので、1,000円という合意が無効となります。結局、この労働契約の時給は、1,200円となります。
このように就業規則を変更しないで、労働者と使用者が個別的に労働条件を不利益に変更しても、その効力は認められないという事になります。
次回は、「賃金と処遇との関係」についてお伝えします。
※本文中の法律についての記載は、平成28年6月21日現在の情報です。
一つは、使用者が合理的な労働条件を定める就業規則を労働者に周知した場合、その労働条件が労働契約の内容になるというものです(労働契約法7条)。
つまり、就業規則に規定された労働条件は、よほど社会的にみて不合理でなければ、労働契約の内容である労働条件となります。
二つ目に、就業規則に定める労働条件は、労働契約との関係で、最低基準としての効力を有します(労働契約法12条)。これは労働条件のうち、就業規則に定めてある労働条件の基準に達しない部分を無効とし、それを就業規則に定める基準で補充することが認められているからです。
例えば、労働者が10人未満で就業規則がない事業場で、時給1,200円の労働者に時給1,000円にして欲しいという使用者からの提案に合意した場合、労働者の時給は1,000 円となります。
しかし、これが就業規則で時給1,200円と定められている場合には、このような合意は無効になります。この場合は、使用者が労働者と時給1,000円で合意したとしても、時給1,000円は就業規則に定める時給1,200円に達していないので、1,000円という合意が無効となります。結局、この労働契約の時給は、1,200円となります。
このように就業規則を変更しないで、労働者と使用者が個別的に労働条件を不利益に変更しても、その効力は認められないという事になります。
次回は、「賃金と処遇との関係」についてお伝えします。
※本文中の法律についての記載は、平成28年6月21日現在の情報です。
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