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経営階層に求められる能力とは?

第7回  イノベーションに必要な思考法

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水平思考の限界

 水平思考は、確かに色々なアイデアが出るのでとても有効な思考法です。しかし、上述したように現状のモデルを前提にしているので、どうしても革新的なモデルにシフトするのは難しく、「現状の改善的創造」で終わってしまう傾向が強いです。
 コトラーの『マーケティング3.0』(朝日新聞出版刊、2010年)では、レベル別のマーケティングの変遷が整理されていますが、それによれば水平思考による創造はマーケティング2.0に位置づけられ、消費者の多様なニーズとりわけ機能的価値に加え感情的価値に応えるものということが言えます。
水平思考の限界

 これからの創造は、マーケティング3.0から4.0にシフトしていくということですが、提供すべき価値は、機能的・感情的に加え「精神的価値」が必要となります。そして、マーケティング4.0の考え方ではさらに「自然的価値」が必要となるようです。(「自然的価値」は、個人を越えて自然が持っている本源的価値を意味します。)

マーケティング3.0、4.0に必要な思考法

 「精神的価値」「自然的価値」を扱っている創造思考法は何でしょうか。C・オットー・シャーマーが『U理論』(英治出版刊、2010年)の中で、以下に示す7つの思考法を提唱しています。

①自分の考え方を元に思考する(ダウンロード)
②事実に基づき思考する(観察する)
③共感して思考する(感じ取る)
④インスピレーションを得る(プレゼンシング)
⑤ビジョンと意図を表現する(結晶化)
⑥アイデアを具体化する(プロトタイピング)
⑦製品化する(実践)

 ①②の思考法は、自分主体の思考法です。③の思考法はカウンセリングで使われている「傾聴」を使った感情を共感する思考法です。④のプレゼンシングとは、自分の表面意識を越えて深層意識にコンタクトして、直観を得る思考法です。この思考法で、既存の見方やモデルからフリーになることができます。⑤の思考法はインスピレーションから目指すビジョンや意図を表現するものです。そして⑥⑦の思考法で、ビジョン、意図から具体的な製品・サービスを形作っていくものです。

 ④のプレゼンシングという思考法は、表面意識から深層意識へコンタクトするという点でこれまでの思考法とは一線を画しています。第5回で「弓と禅」による禅的「見性の境地」を紹介しましたが、まさに一種の悟り的境地に達しないとこのプレゼンシングの思考法を実践するのは、至難の技です。この思考法を身に付けるには、伝統的には仏教の座禅や瞑想という手法がありますが、最近では、「グループにより質問し合う『質問会議』」という手法も普及しつつあります。

 筆者のプレゼンシングの思考法に対する考え方は、イメージを媒介として表面意識と深層意識をコンタクトさせるというものです。この方法を「イメージ・ナビゲーション思考法」と名づけました。表面意識で考えずに、深層意識からのイメージを浮かべ、それを意味解釈することでインスピレーションを得るという思考法です。昔から夢でアイデアを得るという事例はたくさんありますが、その夢で浮かべるイメージを、寝ている時でなく起きている時に浮かべて活用する思考法と言えます。(以下にモデル図を提示します)
マーケティング3.0、4.0に必要な思考法

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