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会議の時間を有効活用する、“人財育成”

第9回  「時間管理能力を高める」会議

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【事例Before】
 とある量販店のマーケティング部で、新しい戦略についての話し合いが行われていた。
「では、来期に向けての新しい戦略……え~、とくにWebマーケティングの強化について、え~、みなさんのアイデアをお伺いしたいのですが……。え~と……。では、金沢さんから一言ずつ、右回りでお願いします……」と進行係を任された荻原が自信なさそうに言った。
最初に意見出しを指名された入社5年目の金沢は、「え~。う~ん……、そうですね……う~ん……うちのお客様専用申し込みページですが……、画像処理に時間がかかってページが開きにくいという要望がちらほら出てるんです。画像などを減らしてですね、できるだけシンプルにして、申し込みしやすいページを作るべきだと思うんですが……」
 メモ係を任されている平山が金沢の意見をホワイトボードに記入していく。
 金沢の次は、課長の新田だ。
「うん、金沢くんの意見はもっともだね。でもそれはWebマーケティング戦略としては弱すぎると私は思うな。ま、それは置いといて、先日、僕、休日を使って、Web戦略セミナーに行ってきたんだ。すごく勉強になったよ。みんなもたまにはそういうのに行くといい。で、そのセミナーで大手のコンサルとかしてる先生が言ってたんだけどね、今はSNSを使ってマーケティングをする時代だそうだ。InstagramとかTwitterやFacebook。君らもプライベートで使ってるんじゃないのか? これからはとくにFecebookがいいらしいぞ。大手量販店のミオンも、携帯会社のシーユーも、みんな専用のFacebookページを作って、いろんな情報を発信して、いいね!を集めているらしいぞ。(中略・話は12分続く)……ということでだな、俺はそこらへんを強化していくべきだと思うんだ」
 新田課長の話はいつも長い。新田が会議で話し出すと、独演会になる。会議の参加者はみんなウンザリした表情をしている。髪を指先で弄んでいる女性社員もいた。
 メモ係の平山は、新田の長い話を必死で板書していた。
「え~と、時間も無くなってきてるので、先にすすめます……、次は峯岸さんお願いします」
 ほうっておくと新田はまだまだ話しそうなので、進行係の荻原は、遠慮がちにではあるが、次の人を指名した。
「そうですね~、う~ん、社員のブログを作る、とか?」
 新人の峯岸の発言に、向かいに座る西脇はフッと吹き出した。
「なに、ブログやってどうすんの? ブログって日記でしょ? それ、誰が見る?」
「え~、ブログでうちの商品を紹介するんですよ~。実際使った感想。売り上げに繋がるかなあって」
「ああ、なるほどね。商品のPRのためね。もっと分かりやすく言ってよ」
「ごめんなさい……」
峯岸はシュンとしている。気まずい雰囲気だ。
「はい峯岸さんの意見は、え~っと……社員の商品PRのブログ、ですね。え~……、次は、岸さん、お願いします」
 険悪なムードを切り替えようと、萩原は次の人を指名した。
「Web登録新規お申し込みキャンペーンをやる、とかどうでしょう?」
 岸がそう言うと、後ろの席に座る藤堂が「またキャンペーンかよ!?なんでもかんでもプレゼントを配ればいいってもんじゃないと思うけどなあ~」とヤジを飛ばした。
「藤堂さん、え~……そういった反対意見はですね……後の方で時間をとってますので、申し訳ないのですが……えっと。そのときにお願いします。では次、北畠さん、お願いします」と萩原は言った。
「……」
 荻原に指名されたベテラン社員の北畠は、考え込んだように口元に手を当てて押し黙っている。これは北畠の癖だった。意見を求められても、すぐには答えない。もったいつけたようにしばらく沈黙をしてから、言うのだ。
「……私としては、ターゲットを絞ったマーケティングをするべきだと思いますね。不特定多数ではなく、富裕層をメインにサービスを展開するのです。たとえば、月10万円以上お買い上げいただいている方に向けて、ご紹介キャンペーンをするとかね……」
「さすが北畠さん! するどい切り口だね~」課長の新田が声を張り上げた。
 荻原は時計を見た。会議室をとってある時間は1時間。会議はもうすでに45分を経過しようとしていた。この調子で意見がまとまるとは思えない。延長をするか、業務終了後にまた再会議か……。またみんなからブーイングが出るだろう。萩原は心の中でため息をついた。

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