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会議の時間を有効活用する、“人財育成”

第8回  「プレゼンテーション力が向上される」会議

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【事例Before】
 とある企業の第二営業部の会議。第二営業部は今期に入り、売り上げ目標が三ヶ月連続で未達成だった。そこで総勢20名の第二営業部メンバー全員が集められ、「残り三ヶ月、売り上げ目標を達成するために何ができるか?」についての話し合いをすることになったのだ。
 進行係を任されている入社6年目の近藤が口を開いた。
「今日の会議では、役職や勤続年数、先輩、後輩も関係ありません。とにかく売り上げ目標を達成させるためにできることをみんなで考えたいと思います。では「売り上げ目標を達成するためになにができるか?」について、まずは一人ずつアイデアを言っていきましょうか。前園さんから時計回りで一言ずつお願いします」
 その直後、一番手前に座る前園が口を開きかけたとき、後ろの席から「ちょっと待った!」と声がした。声の主は、入社10年目のベテラン社員、藤堂だった。
「一人一言ずつアイデアなんて聞いていられないよ! 20人もいるんだぜ? そんなことをして、時間内に意見がまとまると思えない。もっと効率よく進めようよ」
「あ、そうですか……そうですよね。では、アイデアがある方から挙手という形にします。みなさん、どうでしょうか?」
 近藤がそう言うと、「じゃあ、はい!」と、菊池が手をあげた。菊池はまだ20代前半だが営業成績が良く『第二営業部のホープ』と言われていた。
「私のアイデアは、「今忙しいんで」という理由で断られたお客様には、メールかDMを送ること。そうすれば、メールかDMが届いた後「見ていただけましたか?」という口実で再アプローチをかけることができます。」
「はああ……なるほど……」近藤は心底感心した様子で頷いた。さすが第二営業部のホープ、ハキハキしていてとても説得力がある。メモ係の斎藤は、菊池の意見をスラスラとホワイトボードに記入し始めた。
「ほかに意見はありませんか? 先ほども申し上げましたが、役職とか関係ないんで、新人さんもどんどん意見をお願いします。服部さん、どうでしょう?」
 そう言って近藤は、入社1年目の新人・服部を名指しした。
 服部は、おどおどした様子で回りを見渡しながら、こう答えた。
「え~っと……私はですね……その、残り三ヶ月、アポのとれたお客様は、契約率の高い営業マンがプレゼンに行くようにすればいいんじゃないかなあと思いました。そうすれば、確実に契約を取れるのではないかなあと……思っています。なんていうか、私とか、せっかくプレゼンに行っても、契約の段階でオドオドしてしまうことが多くてですね……。こんなときどうすればいいだろうって混乱しちゃうことも多くて。先輩たちならもっとうまくやれるんだろうなあって……」
 服部の小さくよく聞き取れない声と長くまとまりのない話を、最後まで聞いているものはいなかった。
「……え~と、じゃあ、それは、一部のベテラン営業部員だけがプレゼンをするということ?」と、近藤が尋ねた。
「えっと、はい……。そうです……」
 服部はそう呟き、自信なさげに俯いた。
 メモ係の斎藤は、ホワイトボードに『ベテラン社員がプレゼンする』と書いた。
「では、ほかに意見はありませんか?」
 近藤はそう言って参加者全員を見渡した。
 その後、意見が出るには出たが、どれも説得力に欠けるものだった。
 最終的に、プレゼン力も高く、営業成績も良い菊池の意見が決定事項として採用されたのだった。

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