「参加意識を向上させる」会議

話し合いをするために集まっているのに、時間は守らない、発言は少ない…。このような会議になってしまう企業は多いようです。これは、参加者の参加意識が低いことの表れです。会議を開催するなら、参加意識が高まる工夫をしましょう。

【事例】
 ある水曜日の午後一からの会議。新卒の浜田は、会議室に会議開始5分前に到着した。まだ誰も来ておらず、1番乗りだ。浜田にとって、初めての会議だった。
 しばらくその場で待機するが、会議開始の13時になっても誰も来ない。「あれ?会議の日程間違ったかな?」とスケジュール表を確認するが、合っている。そこに浅丘課長が来て、「浜田さん、意欲いっぱいだね~!」と声をかけた。「あ、はい!」と返事はしたものの、浜田は参加意欲など全くなかった。ただ「会議があるから集まるように」と言われたから、来ただけだ。そこに「何の話合いするんだろうかね~。まぁ、なんでもいいけど……私には関係ないし……」と独り言をいいながら入ってきたのが、吉川だった。続けてぞろぞろと参加メンバーがやってきて、浜田がふと時計に目をやると会議開始の時間は7分を過ぎていた。
 この会社では、会議の開始時間が5分から10分遅れるのは、毎回のことだった。

 全員が揃ったところで、会議の発案者でこの部のトップである岡上部長が話し始めた。
「忙しいところに、悪いね~。今日集まってもらったのは、営業部へのサポートのこと。社長から、売上げが下がってるから、内勤も営業部のサポートをしろということで、話があってね。それで、どんなことができるかみんなで話し合いたいんだ」
 すでに会議室の置時計は13時12分を指していた。
「え?すでに、営業部の各自が作成している伝票をチェックして手伝ってますよ。まだ他に……ですか?」と浅丘課長が、怪訝そうな顔つきで言った。
 浅丘課長の言葉に、岡上部長は大きく頷き、こう答えた。
「だよね~!私も藤田社長に、そう言ったんだけどね。だけど、それ以外で各部署から提案しろって言われたんだよね~。ということで他に何かアイデア、ない?」 
「……」 
 誰も発言なく静まり返る。
「吉川くんは、どう?この会社に転職してきて5年位だっけ?前の会社で参考になるようなことはない?」と岡上部長。
「いやぁ、特に…」吉川はそう良い、俯いた。普段から会議で意見を求められても、ほとんど発言しない吉川である。
「はい、部長。僕たちも営業電話のお手伝いするのはどうですか?」岡倉が発言した。
「はぁ?君さぁ、何言ってるの?ここは営業部じゃないんだけど」という風間の発言に、すかさず岡上部長は「風間くん!人の意見に否定するなら、君にはいったいどんなアイデアがあるの?代替案がないのに他の人の意見を否定するのはやめてね」と言い放った。
 再び会議室に沈黙が訪れる。

 ベテランの風間に否定され、意見を言ったことを後悔する岡倉は、「もう意見を言うのは止めとこう」と密かに心に誓った。風間は風間で、部長の言葉でバツの悪い思いをして、俯いている。そんな社員たちの姿を見て、「やっぱり黙って座っておくのが無難」と再認識した吉川だった。
 新人の浜田はそんな先輩社員たちの様子にうろたえ、どうすることもできず、ただ黙って様子を見守っていた。

 話し合いをするために集まっているのに、時間は守らない、発言は少ない…。このような会議になってしまう企業は多いようです。これは、参加者の参加意識が低いことの表れです。会議を開催するなら、参加意識が高まる工夫をしましょう。会議中も、参加者の参加意欲を削がない工夫をする必要があります。

会議が開催される前にすること…「会議招待状(アジェンダ)」の配布

 事例で吉川の「何の話合いするんだろうかね~」という発言からも分かるように、ほとんど全員が会議の目的・目標が明確でないまま会議室に集合しています。
 会議を開催するなら、事前に参加者全員に『会議招待状』を送りましょう。会議招待状には、会議の目的(=何のために開催する会議か)と、会議の目標(=会議が終わったらどうなっているのか)、そして、明確な時間配分を書いた時間表を必ず記入します。そうすることで、会議への参加意識を高めることができます。
 会議の目的と目標が事前にわかると、参加者はやるべき準備も事前に分かります。事前準備がある分、会議中に自信を持って発言もできるようになります。

会議が開催されてはじめにすること……「名札作り」「自己紹介(1分トーク)」

 席に着いたら、自分の名札は自分で作るようにします。名札を各自で作ることで、“会議の脳”にスイッチを入れるのです。
 また、本格的な議論を開始する前に、“話す”という準備運動を行うことも大切です。参加者の中に新人や初めて参加する人がいれば、全員が自己紹介を行います。顔見知りの参加者ばかりの場合は、なにかひとつテーマを決めて話します。たとえば、「最近おすすめのランチは?」とか「はまっていることは?」など、軽いテーマでひとこと程度話をしてもらいます。参加者全員が自分のことを“話す”ことで、会議の重要なメンバーの一員であるということを自覚してもらう、大切な工夫です。

ネガティブ意見は、大歓迎にすること

 会議で社員の否定的な意見を嫌う経営者や管理職は多いようです。しかし、むしろ否定的な意見こそが貴重な意見と捉えましょう。
 岡上部長の「人の意見に否定するなら、君にはいったいどんなアイデアがあるの?代替案がないのに他の人の意見を否定するのはやめてね」という発言こそが、会議への参加意欲を削ぐマイナス発言だということに気づきましょう。
 経営者や管理職など、立場が上の人間こそ、良くないと言われるマイナス的な要素の話に耳を傾ける必要があります。経営の立場で考えるのであれば、事前にマイナス的なことを探り出し、マイナスが大きくならないように策を講じることに努めることが大切です。
 ただ、「どんな意見でも言ってくれ」と言われて、みんなの前で堂々と否定的な意見を発言できる人は少ないでしょう。また、せっかく出した意見を他の参加者に否定されたら、傷つき、参加意欲が低くなります。
 そこで、参加者全員で、出た意見に対する“否定的な意見を発言する時間”を設けるようにします。これなら、全員が堂々と否定的な意見を言うことができます。

 次回は、「自律型人財が育成される」会議 です。お楽しみに!

POINT
・会議を開催する前に、アジェンダを配布しよう
・議論に入る前に、“話す”準備運動をしよう
・否定的な意見を大切にしよう