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メンタリングで人や組織の可能性を引き出す

第5回  しなやかで強い社員の輩出法~意識改革ではない。いまこそ“在り方改革”

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正解のない時代、「意識改革」とそれに疲れた社員のはざまで…

正解のない時代、「意識改革」とそれに疲れた社員のはざまで…

 10年後、あなたはどんな自分であり、どんな会社にいるのでしょう。

 わたしは高校1年生向けにキャリア授業も行っています。テーマは「25歳の自分創り」。彼らは10年後の自分を今描き始めています。ひとが成長していくその瞬間に立ち会うのはしあわせなことですね。

 彼らの10年後を楽しみにしつつも、わたしたちは今を生きています。
 誰も経験したことのない時代。IOTやAIなどの技術革新、グローバル化とその軋轢、社会制度が激変する現代社会、1年後を見通すのも困難な時代です。
 「正解を持つ」ひとりのリーダーが引っ張り、あとは唯々諾々ついてくればいい時代は終わりました。正解は創る時代です。柔軟でかつ目的を失わず、常に大切なものを守りながら革新し続ける人や組織こそが残る時代です。
 それにはひとりひとりがリーダーでありながら団結ある力を発揮させることが真剣に求められています。ひとりひとりをリーダーにできるリーダーこそが求められているとも言えます。

 ひとつの方法として「意識改革」は何度も繰り返し叫ばれてきました。
 いわく「みずからリーダーの自覚を持つべきだ」「顧客志向に変わるんだ」「みずから行動するんだ」などなど。
 しかし社員はこっそりこう思っています。
「言わなくてもわかっているよ。いつまで意識改革に振り回されるんだ……」
 最新技術に遅れるな。グローバルな意識を持て。激変する社会制度に対応せよ。
 少なくとも何年も社会で活躍し、苦労もしてきた社員たちは「変わることへの要請」に疲れています。いつになったら落ち着くことができるんだろう。なんで変わり続けないといけないのだろう。
 ひととして生きる素朴で切実な声です。しかし社会が変わり続けるのも事実。対応次第では会社が無くなる可能性もあります。
 この狭間でなお、しなやかで強い社員たちを生み出せるのでしょうか?

ジレンマに陥る社員がまっさきに見るものとは

 思考実験をしてみましょう。「実感」をこめて。
 「顧客志向」という言葉。いまやビジネス一般通念として「正しい意識」ですよね。
 わたしも顧客志向の大切さは身に染みた実感としてあります。あなたも、同じような実感をお持ちでしょう。
 
 さて、もし社員がこんな状況に陥っていたらどうしますか?

「顧客が無理で無茶だ。振り回されすぎて、正直、もう顧客志向はつらい。」
 
 一度は経験するジレンマですよね。
 顧客に寄り添う? 社員を大切にする? つかず離れずやりすごす?……
 こんなとき、どんな「意識」を社員に求めたらよいのでしょうか?

 社員の心の声はこんなにあわただしいものです。

 (ああ、いやだ。分からない。何が正解だろう。わたしが決めていいのかな、自分が決めたことを後で上司に責められないだろうか、無難にした方がいいかな、無難にやり過ごすとかえってあとでややこしいかな……)

 心の声は不安だらけ。いくら「顧客志向が第一」と言っても、社員にまず起こるのは不安なのです。

 実のところ、このケースに正解はありません。
 100の会社があれば100通りの意識、対応があります。顧客側に立って成功する会社もあれば、厳しい基準で顧客を選別して成功する会社もあります。
 正解はありません。が、考えることで「社員がやる気を出し、リーダーになるには?」という条件が見えてきます。
社員の「真のやる気」にアクセスするメンタリングの原則とともに見ていきましょう。

メンタリングの原則で見る「やる気の出しどころ」

 社員が判断に困った時や不安になった時、何よりも経営者や上司の姿を見ます。問題を見るのではありません。
 上に立つ人間がどのような姿勢で、どうやって対処するのか。問題に対峙する「ひと」の姿を見ているのです。
 そもそも経営者や上司が動揺していたら社員は不安でなりませんし、もし社員の決断を責めるだけだったら、その社員は二度と自ら決断することはありません。また前に言われた「守るべき意識」が問題の瞬間にひっくり返されたとき、その社員は二度と「上の言葉」を信じません。

 ひとはひとの姿を見て育ちます。尊敬し信頼するひとの姿をみてひとは育ちます。ヒトの本能でもあり、だからたとえば幼児は大人のやることをやりたがります。「ごっこ遊び」などを通して社会性や成長後の姿を刻み付けています。
 ひとはひとを見て、「こうなりたい」または「こうなりたくない」というみずからの「やる気を出しどころ」を決めています。

 その「やる気の出しどころの」の第一。それはなによりも姿勢です。
 まずは何よりもその姿勢をみて「こうなりたい、なりたくない」を決めています。
激変する社会、どんな姿勢が問われ、どんな姿勢がひとのやる気と信頼を得るかをいまこそ考えるときにきています。
 そして、二つ目にその姿勢を現した「行動基準」です。
 理念やミッションやポリシーなどの類似の言葉はありますが、ここでは同じとします。要は、会社内・社員と会社外・顧客や社会に対して発信する「姿勢の表明」です。
「行動基準」が実際の姿勢と一致しているとき、ひとは多大なる信頼感をいだきます。

 「行動基準」には正解はありません。
 大切なのは、ソレを本気で信じていること。社員がソレを共有し、経営者や上司がたとえ目の前にいなくとも自分たちと同じ姿勢でいることを信じ切って、社員みずからの判断でソレを実行できるかどうかです。

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