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デール・カーネギーが贈る成功の秘訣

第29回  ストレス軽減

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 私たちのほとんどが仕事に一番時間を費やしているのは当然といえば当然です。少ない時間でより多くの仕事を早く上手にこなすプレッシャーがかかるについれ、毎日の仕事が私たちの生活を支配するようになります。スマートフォン、タブレット、フェイスブック、ツイッター、リンクトインなどのおかげで、365日24時間年中無休の忙しいライフスタイルが広がっています。その結果、ストレスのレベルは上昇の一途をたどっているようです。健康を損ねないようにするには、職場でのストレスを減らす簡単な方法を見つけることが急務です。

 不安や疲労、病気の兆候を抑える職場での習慣をお教えしましょう。

1.  目の前の仕事に関係するもの以外の書類をデスクから片づける
 書類に囲まれて仕事をしているのは、デスクに積み上げているからです。その代りにTRAFを実践してください。

捨てる(Toss) 書類の山に目をやると、絶対に目を通したり読まない書類が沢山あることに気づきます。捨てるか取っておくか決める瞬間に、「必要になる場合に備えて取っておこう」という致命的な言葉を発するからです。何年経っても、必要になることはありません。それどころか、こんな書類があったことさえ忘れています。似たような経験があるのは私だけではないはずです。さっさと捨ててしまいましょう。

任せる(Refer) 仕事を任せる第一歩ですが、やり方が下手なので物事を任せるのが苦手という人がほとんどです。「自分でやった方が手っ取り早い」などとたわけたことを言うのが普通です。実際に仕事を任せる段になると、相手のデスクに忌まわしい書類をどさっと置いてその仕事を頼み、軽い足取りで彼方に消えていくのが関の山です。そうではなく、相手にその仕事を頼む理由やフォローアップのプロセスをきちんと説明することが必要です。相手の承諾を得るにはきちんと話すことが必要です。そうすれば相手の担当になるため、責任が移り自分の負担が軽くなって「監督するだけ」で済みます。

アクション(Action) 短時間でできるならその場で片づけてしまう、後回しにするなら「やること」リストに加えて、後日の優先順位を付けます。後でやるなら手帳を見て、それができる日を探して書き込み、その日を空けておいて仕事を完了します。手帳に記入してその日の何時にやるか決めることで、やるべきことをやる確率は高くなります。

ファイル(File) ファイルする前に、本当にこの情報が必要かどうか自問してください。必要なのが一部ならば、写真を撮ったりエバーノートなどのツールにファイルします。文書をスキャンして電子的にファイルし現物の記録をすべてなくすことも考えられます。ある種の書類を電子的にファイルするのは不安かもしれませんが、大半はスキャンしたらゴミ箱行きでよいでしょう。

 職場の中にはペイパーレスを徹底して、あらゆるものをスキャンしてデジタルに保存している職場もあります。すべてが保存された車輪付きの小型キャビネットがチームに支給されます。私はそれを見ると「この人たちにできるなら、自分にもできるかもしれない」という気がしてくるのです。

2.  重要度に応じて取りかかる
 すべての書類の価値が同じわけはありません。仕事に優先順位を付けるのは当然です。全部やることはできませんが、一番重要なことはできます。何が最も重要かを判断して着手すればいいわけです。やるべきすべてのことに取り組もうとするから、デスクの上で書類をあちこち動かす羽目になります。書類の山に圧倒されて、デスクに散らかった無数の書類を仕分けできなくなります。優先順位が高いものと低いものの2つにざっと分けるだけでも最も重要な項目にだけ注目できるようになり、書類の山に埋もれることはなくなります。

3.  整理して責任を委ねる
 これは任せると同様ですが、権限委譲に精通すれば、そもそもその仕事はあなたのところに来なくなります。先回りをして他の人に委ねるからです。私たちの仕事は任せた相手が取りかかる前に仕事について話し合うことです。仕事を監督して、予定通り進んでいることを確認したら、後は任せます。どんなことがあっても仕事を取り返すのは禁物です。今後はそのトピックについてのすべての情報をあなたではなく仕事を任せた相手に流すようにと、チームの他の人にも伝えます。チームメンバーに、(無関係な電子メールはもちろん)関係のある電子メールにあなたをCCするのはやめてもらいましょう。

4. 問題を先送りし続けない
 そうはいっても、先送りにはポジティブなものとそうでないものがあります。今は何もしないという決断がベストな選択肢である可能性もあります。そうした決断を認識しておくことが必要です。ネガティブな先送りとは決断を下すことを恐れて動きが取れなくなっているために、すべき時にすべきことをしないことです。問題があって決断を下すのに必要な事実が揃っているならその場で解決してください。ことわざにあるように、「カエルを飲み込まなければならないなら一挙にやってしまえ」です。

 これらのアイデアはどれも目新しいものではありません。誰もが知っていながら、実行しないだけです。コンセプトは理解していても実地に移しません。わかっていても手を下さないのです。圧倒され、書類と電子メールがどんどん増えてストレスのレベルが上がると人間は意気消沈します。

 シンプルがベストです。簡単なソリューションから始めて仕事の負担に対応しましょう。

■学んだ要点
1. 捨てる、任せる、アクション、ファイルで生産性を高める
2. 優先順位を付ける
3. 委ねる
4. 嫌なことは一気にやる

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プロフィール

デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン 代表取締役  グレッグ・ストーリー博士<Br>(Dr. Greg Story)

デール・カーネギー・トレーニング・ジャパン 代表取締役 グレッグ・ストーリー博士
(Dr. Greg Story)

デール・カーネギーに参画するまで、インターナショナルな環境での人材育成研修を数多く経験してきた。まずアジアにあるAustrade社ではリージョナルトレーニングプログラムを企画し、このプログラムを拠点で実施展開するための社内インストラクターの養成も行い、そのためのプログラムも開発した。具体的には、ベトナム、台湾、香港、中国、韓国、そして日本で実施展開を行った。また新生銀行では、ジェネラル・マネージャーとして、新生ビジネススクール(新生銀行の社内ユニバーシティ)創設に尽力し、特に銀行のリテール部門における、製品知識や、セールス、マネジメント、リーダーシップそしてカスタマーサービスの研修に関する社内インストラクターの育成を行った。

デール・カーネギーのトレーナーとしてはデール・カーネギー・コース、アドバンスト・デール・カーネギー、セールス・アドバンテージ、リーダーシップ・トレーニング・フォー・マネージャーズ、ハイ・インパクト・プレゼンテーションの認定を取得しており、今まで貿易、金融、IT、リテール、官公庁、製造、教育等の産業にトレーニングを提供してきた。

デール・カーネギー・トレーニングは、企業が必要とする6つの分野にフォーカスしたカリキュラムを提供しています。
・チームメンバーエンゲージメント
・リーダーシップ開発
・プレゼンテーション
・プロセス改善とイノベーション
・セールス
・カスタマーサービス

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