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デール・カーネギーが贈る成功の秘訣

第27回  明確に伝える

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 パブリック・スピーキングと聞くと、誰もが多大な恐怖を感じ、困難極まりないと、震えあがりそうになるものです。デール・カーネギー・トレーニングでは、数あるパブリック・スピーキング・コースの1つであるハイ・インパクト・プレゼンテーション・コースを提供していますが、その一環として、過去4年間にわたり、様々な受講者の方々に対して最も向上したい分野とは何かについて調査を行ってきました。日本人スピーカーと英語のスピーカーの両グループとも、「プレゼンテーションではっきりと話せるようになること」が最も共通するリクエストでした。では、「はっきり」とはどういうことなのでしょう。スピーカーは、彼らのメッセージが聴衆に意味が伝わり、分かり易く、また人前に立って話す努力をすることで何らかの影響を与えることを期待します。

 これは容易なことではありません。なぜならいつも窮地を脱して勝利を得ているからです。私たちは、聴衆とコミュニケーションをとる能力を打ち消してしまうような誤りをいくつか犯してしまっています。ここでは、そのような状況が決して起こらないようにする重要な要素をいくつか紹介します。

 まず第1に、スピーチの目的は何かを決める必要があります。聴衆を楽しませることなので、自分や自分たちの組織について細かい点は話さず、まず温かさを感じてもらえるようにしますか?聴衆に対し、自分たちの組織がしっかりしていて信用できること説得したり、印象付けたりすることですか?自分たちが推奨する行動を聴衆がとってくれるように説得またはインスピレーションを与えることですか?それとも単に、聴衆の業界に関連する最近のデータや情報をいくつか紹介することですか?私たちは、スピーチの構成や資料などの準備、伝え方を心配する前に、スピーチで何を達成しようとしているのかについてきちんと明確にする必要があります。

 第2に、誰に対してスピーチを行うのかについて、前もってしっかりと調査する必要があります。世代構成、年齢層、男女の比率はどのようになっていますか?その分野の専門家か単なる愛好家か、プロの批評家か素人評論家か、支持者か、もしくは見込み客なのか、など、聴衆の種類を把握します。スピーチが、聴衆にとって適切なレベルなものでなければなりません。その分野に精通している人に対して低レベルな内容のスピーチを行うのは必ず侮辱ととられてしまうので禁物です。略語や専門用語ばかりを使ってエキスパート気取りをしてしまうと、聴衆は遠ざかってしまいます。聞き手の理解度を見きわめ、彼らの専門知識レベルで話すようにしなければなりません。

 第3に、スピーチの前に予行演習をする必要があります。簡単に聞こえますよね。でも、実際にしている人はほとんどいないのです。セールスでは、「顧客相手に練習しない」のが鉄則です。プレゼンターも、この同じ金言を胸に刻むべきでしょう。スピーチの原稿を用意するのであれば、原稿に書いてある言葉を読むのと、口に出して言うのではリズムが違うことに気づいたりします。また、時間を完全に読み間違え、長すぎたり短すぎたりすることもあります。まず、他の言葉よりも強調して強めに言うキーワードを選ぶことから始めましょう。退屈で単調な話し方は、プロフェッショナルでないスピーカーや優秀でないスピーカーたちが最も犯しやすい過ちの1つです。

 日本人スピーカーたちから、日本語は単調であまり音調がない言語だからパブリック・スピーキングでは根本的に不利であるという不平の声も聞きます。確かに、英語に比べると音調の多様性に欠けてはいますが、でも、2つの簡単な変化を加えるだけで、単調な日本語のスピーチから脱皮することができます。1つは、速めたり、遅めたりと、ペースを付けることです。もう1つは、力を入れて強めに発音したり、力を抜いてささやくように言ったりと、語句を言う時に変化を付けることです。これらのテクニックはどちらも、単調なスピーチを変化に富んだプレゼンテーションにし、聴衆の関心を惹き続けるのに役立ちます。

 第4に、正しい話し方をすることを心がけます。メッセージはそれだけでは伝わりません。内容の質さえ良ければ良いというわけでもありません。聴衆があなたの声を聞き取れなかったら、データの素晴らしい価値だけでは不十分なのです。そうです。聴衆があなたが話しているのを物理的に聞けたとしても、内容と話し方が調和していなければ、実際にはメッセージのわずか7%しか聴衆には伝わっていないのです。驚くほど低い数字ですね。

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