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デール・カーネギーが贈る成功の秘訣

第26回  下手なプレゼンテーションはブランドの命とり

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 社内会議、公の場かを問わず、プレゼンテーションを行う際は私たち個人のブランドが評価されます。公の場でのプレゼンテーションの場合は、実際には自分のブランドと組織のブランドの2つが精査されます。私たちは、そこで働く人を判断材料に企業や組織を判断します。公の場では、組織を代表してプレゼンテーションを行った人のパフォーマンスに応じて優劣を定めるわけです。

 私は平均すると月に8-10のプレゼンテーションに出席し、自分も講演者として500回近くプレゼンテーションを行ってきました。プレゼンの仕方があまりに稚拙なため単純な事でもメッセージが伝わらないことがあります。話し方とメッセージそのものがそぐわないと、メッセージはほとんど相手に届きません。

 皮肉なのは、最悪な人ほど機関銃のようにしゃべり続けることです。メッセージを伝えるうえで自分に問題があっても、「質」が勝ってメッセージは伝わると信じているからです。「内容が優れているから、話し上手である必要はない」、「プレゼンテーションスキルというたわごとより、情報の質の方が重要だ」、「話し上手でないことは自分でもわかっているが、聴衆は私の話ではなく情報を目当てにしている」という具合です。

 このような考えは端的に言って幻想です。

 聴衆はあなたのことも、あなたが提出するデータについても判断を下します。目で見て耳で聞いたことをベースに、プロフェッショナルとしてのあなたと組織の信頼性について仮説を立てます。企業の上層部の皆様、お願いですから技術的な専門家に公の場でプレゼンテーションをさせないでください。プレゼンテーションの素人である彼らが貴社のブランドを台無しにすることは確実です。きちんとトレーニングして準備を整え、ブランド大使、ブランドの守護神に育てあげてください。

 容易にミスを防げたはずの最近のプレゼンテーションの例をいくつかご紹介します。

 業界で長い経験を誇る人物によるそこそこのプレゼンテーションは、3つのミスによって台無しになりました。

 最初のミスは、プレゼン進行の合図としてスクリーンを使ったことです。聴衆に背を向けてスクリーンの方を向いたため、集まった聴衆とアイコンタクトを取る機会を逃しました。聴衆に背を向けてしまったら、聴衆のプレゼンへの反応を知ることはおろか、「目力」で重要なポイントを強調することもできません。

 2つ目はよくあることですが、パワーポイントの使い方を誤ったことです。画面上の内容が細かすぎると理解しづらくなって重要なポイントがぼやけ、プレゼンテーションのメインであるあなた自身から注意がそれます。そうです、プレゼンテーションのメインは講演者であるあなたであり、画面の内容ではありません。聴衆はあなたの意見とあなたが提供する情報を目当てにきているのです。

 もう1つ首をかしげたのは、色の使い方でした。明快なメッセージという点からすると、特に「ごちゃごちゃした」スクリーンでは黒地に赤は絶対に禁物です。20センチしか離れていないラップトップのスクリーンではおしゃれに見えても、プロジェクターや予備のスクリーンなどのプロセスを進むうちに、おしゃれな要素は消え去って理解不能になります。聴衆がスクリーンから10メートル以上離れている場合はさらに見えづらくなります。

 プロジェクションツールの話題が出ましたが、私が出席した別のプレゼンテーションでは壁かけ式のホワイトボードがスクリーンとして使われました。ホワイトボードにプロジェクターが発する強い光が反射したうえ、白地のスライドに黒字の本文が使われたため、太陽光が雪に反射したときのようにまぶしくなり、スライドは読みづらく集中できなくなりました。紺地に白の本文を選んでいたら、比較的シンプルながら効果的だったはずです。

 さて、先ほどのついてない講演者に戻ります。個人のブランドに更に傷がついたのは、質疑応答への対応でした。プレゼンテーションは100%コントロールできていても、質疑応答で一挙にコントロールを失うことは少なくありません。

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