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ダイバーシティ経営の基本・課題・副作用

第8回  LGBT・セクシャルマイノリティー対応を見つめ直す

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なかなか進まないLGBT対応

なかなか進まないLGBT対応

 最近になってようやく、就職活動の会社説明会などの場で、ダイバーシティ経営の状況やLGBT対応について、会社側が質問を受ける前に説明するようになりました。
 これは人事部門として非常に良い対応だと筆者は思います。というのも、LGBT当事者が自ら会社に質問せずに済むことで、就職で不利になったり入社後に同僚から特異な目で見られたりすることを恐れる必要がなくて済むからです。
 確かに、社会的にもダイバーシティ&インクルージョンの機運が高まり、ストレート・アライ(LGBT当事者ではないが理解し支援・協調する者)も徐々に増えてきています。しかし、LGBTに対する根強い差別や偏見、あるいは無関心といった様々な問題の解消にはほど遠く、日常生活や職場で自らがLGBT当事者であるとカミングアウトすることに抵抗を感じている人が多いのが現状です。また、そうした状況を乗り越えて信頼する相手にカミングアウトしたとても、今度は「あの人はLGBTだ」と周りに暴露されるアウトカミングに遭う、といった人までいるのです。

当事者を苦しめる筋違いな言い分

 読者諸氏の中には、もしかすると、「LGBT当事者が自らの権利を得たいのであれば、自らLGBT当事者と申し出る義務があるのではないか」という意見をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。
 確かに、一般的な法令には「法の上に眠る者は保護に値せず」という法曹界の格言がありますが、ここで筆者が述べているのは「義務を負い、権利を得る」一般の法令のお話しではなく、ダイバーシティ経営のスタートポイントである「人権」のお話しなのです。
 人権は誰もが生まれた瞬間から等しく有する権利です。ですから、LGBT当事者自らが「私はLGBT当事者なのでかくかくしかじかの配慮をして下さい。その人権を得るために私はこのような犠牲を払います」というようなお話しは筋違いなのです。
 筆者は以前から日本のビルや公共施設のトイレに「男性用」と「女性用」しかない点をダイバーシティ経営上の欠陥として問題視してきました。
 LGBT当事者の中にはトイレに入るその度に「私はどちらのトイレに入るべきか」「私がこちらのトイレに入ったのを見た周りの人はどう反応するか」と心を痛める人もいるのです。
 人権のことや日常のトイレ問題を十分に踏まえ、性別に関係なく利用できるジェンダーレス・トイレを設置している企業や公共施設もありますが、残念ながらまだまだ少数であるというのが現状です。

大事な繰り返し事項: 「会社側が多様な生き方・働き方の選択肢を提供する」

 人権は人が生まれた時から不可分のものとして持つものであり、何かをしたから人権を与えてやるというものではないことは、賢明な読者諸氏は既におわかりの通りでしょう。
 ただ、企業経営となると、人権を費用・効率性・手間などと天秤にかける経営者や職場の仲間たちが少なくないように見受けられて、筆者は非常に心を痛めています。
 労働形態として会社が多様な生き方・働き方を従業員に提供することが、ダイバーシティ経営において非常に重要なのです。そして、労働環境についても同様です。
 そのひとつが前述の会社説明会で会社側が説明する自社のLGBT対応であり、また、ジェンダーレス・トイレであり、ノン・ハラスメント経営を志向する企業姿勢なのです。
 念のため触れておけば、セクシャル・ハラスメントは男性から女性に対してのみ成り立つものではなく、男性同士でも女性同士でも、また、女性から男性に対しても成り立つものです。
 LGBTの観点から考えると、生物学的には男性であっても精神的に女性であれば、男性から触れられることは、「男性から女性に対して身体的接触をしている」ものに他ならないのです。

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