経営・ビジネスの課題解決メディア「経営プロ」

ダイバーシティ経営の基本・課題・副作用

第4回  1年間の「育休経営者」として見てきた役職員の意識変革の必要性

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

否定するなら「体験」した上で「代案」を出せ!

 ダイバーシティ経営に否定的な人や消極的な人に対して、筆者は「相手の身になって物事を考え意思決定するためには、実際に今の子育てを体験した上で代案を出して頂きたい」と常にお話しています。
 マタハラやパタハラが生じる背景のひとつとして、筆者が切り拓いた監査心理学の分野で、不正の3類型における1つのパターンである「不正認識欠如型の不正」があるように見受けられます。つまり、人は経験・体験していないことを自身にとって都合の良い解釈で判断・対応しがちである、という問題があるのです。
 実際に出産・育児・家事などを自ら一定期間経験してはじめて、皮膚感覚で妊産婦の方々の苦労や子育て、家事の大変さを理解し得るものなのです。
 そこで、筆者は実体験を基に企業現場でついつい起こりがちな、産休・育休などを理由にしたマタハラ・パタハラ予防対策を社内研修や講演会などで行っています。これは出産や育児に対して職場の同僚や上司、部下の理解を深め、妊産婦・子育て期・男女共同参画という旧来は職場に相容れなかったかのような社内異文化の相互理解をするための場でもあります。
 筆者は妊婦の方より太っていることもあり「着用の必要はないんじゃないですか?」と受講生の方からからかわれる(これは「デブハラ」とでも呼ぶべきでしょうか?)ことがありますが、エプロン式の砂袋(7kg~8kg程度の重さ)入り妊婦体験キットを使って、妊婦役の方と妊婦ではない人役の方とで、同じ作業や運動をして頂き、それぞれにどう感じたか、どういった支援があると嬉しいかなどをディスカッションしてもらっています。
 夏の猛暑の中で、立ち座り・箱を動かす・階段の昇り降り・ちょっとした段差のあるところを何度か往復する、ということだけでも、実際に妊婦体験をしてもらうと心の許容度や価値観・感性・相互理解などの多様化の度合いが高くなりやすいようです。
 ダイバーシティ経営の戦略立案・施策検討・実施の際、どれだけの企業で、経営者や職場の同僚どうしが、実際にダイバーシティ経営で直面するシーンや施策活用者側の状況を体験できているでしょうか。
 また、ダイバーシティ経営に否定的な方々は、(本稿では子育て等に絞っておりますが)介護・育児・出産・多国籍環境・異文化・異なる宗教などについて、どれだけ理解をしているのでしょうか。
 「そんなのダメだ」と切り捨ててしまうのではなく、「~は実際に体験してみたけど、~の観点からダメだと思うから、~という別の対応策(代案)でいこう!」という、返答や対応にも多様化が必要なのです。
 ダイバーシティ経営を机上で立派に議論する前に、実際に体験し、学ぶことからはじめなければならないと筆者は考え、思考や行動の多様化と新たな環境への適応を、身をもって推し進めています。
 ダイバーシティ経営は、「実践の場」と「相手の身になってみること」と「自分からやってみること」が大切だと筆者は常々思っているのです。

お気に入りに登録

プロフィール

日本マネジメント総合研究所合同会社 理事長 戸村 智憲 氏

日本マネジメント総合研究所合同会社 理事長 戸村 智憲 氏

早大卒。米国MBA修了。米国博士後期課程(Ph.D)中退。国連勤務の国際公務員として、国連内部監査業務専門官・国連戦略立案専門官リーダー・国連主導の世界的CSR運動「国連グローバルコンパクト(UNGC)」広報業務などを担当。退官後、民間企業役員として人事総務統括や、経営行動科学学会理事、上場IT企業のJFEシステムズ(株)アドバイザー、JA長野中央会顧問などを歴任。日本の人気講師ランキング3位にランクイン(日経産業新聞しらべ)。息子の出産立会や1年間の育休も取得し育児・家事・仕事に取組む。NHK「クローズアップ現代」等のTV出演や連載・寄稿多数。著書30冊。経営指導・人材育成・著述業の3つの柱で一歩突っ込んだ指導で全国各地にて活動中。
ホームページ:日本マネジメント総合研究所合同会社

関連記事

会員登録 / ログイン

会員登録すると会員限定機能や各種特典がご利用いただけます。 新規会員登録

会員ログインの方はこちら