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ダイバーシティ経営の基本・課題・副作用

第3回  元、国連の専門官として見てきた世界標準のダイバーシティ対応

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③子供が熱を出した、さあ、どうする?というシーンが違う!家族第一の職場

 日本企業だと、いわゆるワーキングマザー(この言葉自体が死語であることを祈ります……)で、子供が熱を出したという連絡を幼稚園などから受けた場合、どんな対応が想定されるでしょうか。
 「あぁ、どうしよう。仕事はたくさんあるのに早退して子供を迎えに行って、夫も勤務中だし私が家で看病しなくちゃいけないかも。困ったわぁ~」という、女性の役職員の方が悩むシーンが多いように思います。
 そして、職場の同僚に気を遣いながら、意を決し上司に「あのぉ~、大変お忙しいところ申し訳ないのですが……、子供が熱を出してお迎えが必要になってしまいまして……早退させて頂けないでしょうか」とあたかも自らが仕事の厄介者であるかのように申し出るような、上司の顔色やご機嫌を伺いながら仕事優先か家庭優先かの判断に迫られるシーンもあるのではないでしょうか。
 「なんだよ、この忙しい時に自分だけ早退かよ。家庭を優先して仕事はどうでもいいと思ってるんじゃないのか!」といったマタハラ的な心の声を押し殺した、上司の嫌そうな相互理解に欠ける表情やしぐさがあるかもしれません。
 しかし、当時の筆者の上官(女性)は共働きで小さなお子さんが実際に熱を出して早退しなければいけなかった際に、その女性の上官が自分の子供の発熱と迎えに行くことが必要であることを所長に告げただけで、所長は、「なにしてるの?早く迎えに行って家で看病してあげるべきでしょ」と、逆に職場にとどまろうとしていた女性の上官の背中を後押しして、家庭優先を促していました。
 では、各国からの膨大な業務をさばくのに困ったかといえば、筆者を含め「家庭を大切にしても仕事でほとんど困らない仕組み」のおかげで、何の問題もありませんでした。その仕組みとは、日本でも最近は当たり前のように導入している「ワークフロー」(申請・承認を安全なインターネット回線を通じてワンクリックで行える仕組み)や、テレワーク(ITを活用した在宅勤務)でした。
 もちろん、今のようにIT各社がごく普通に提供しているサービスではありませんでしたが、当時、筆者のオフィスには元NASAのシステムエンジニアだったフランス人の職員がいたことが幸いしていました。
 オフィス内で業務利用しているパソコンを自宅に持ち帰っても、情報漏えいのリスクが低く、当時は最高レベルといっていいほど安全なセキュリティ対策を施していたので、そのパソコンを持って女性の上官が早退しても、その後の筆者との申請・承認や相談は、すべてインターネットを介して対応できていました。
 その上官は傍らで子供の看病をしながら、優先順位に応じて業務進行できる状態であり、IT環境を駆使した仕組み化によって「仕事も家庭もシームレス(継ぎ目なく)に仕事と家庭の調和(ワーク・ライフ・ハーモニー)をもたらす」状態が実現されていました。

ダイバーシティ経営への意識変革と仕組み化を進めよう!

 これまで言及してきたほかにも、ダイバーシティ&インクルージョン対応として当時から国連で当たり前だったことで、今の日本企業・社会・人の意識変革に寄与する重要なことは多々あります。
 次回以降の本連載におきましても、国連の職場のワンシーン・対応・意識などを基にしつつ、新たな社会動向やIT環境を踏まえた取り組むべき対策など、多様な観点からダイバーシティ経営を見つめていきます。
 先日、ダイバーシティ経営を進めるためのIT対策セミナーの基調講演に登壇する際、3歳の息子と看護師である妻とともに会場にお伺いし、「子連れ講演」を行ってみました。
 これは、弊社プレスリリースでも明示しましたが、ある重要なダイバーシティ経営のポイントを会場で実演・実感頂くためのものでした。詳細は下記のリンクより詳細をご覧いただければと思いますが、その重要ポイントとは、多様な方々を職場や社会から排除せず、受け入れあい理解し合うということです。ダイバーシティ経営(ダイバーシティ&インクルージョンでのビジネス対応など)が、人にやさしく危機にも強い企業経営やビジネス活動として、また、人・企業・社会にとってより健全で活かせるメリットを積極的に活用して、人と企業と社会の成長戦略に資するものとして、本連載で次回以降もいろんなお話しをお届けさせて頂きます。

■プレスリリース
http://www.dreamnews.jp/press/0000136642/


 末筆にて恐縮ですが、日本の国技である相撲に関して本稿で触れましたこともあり、永遠の名横綱「千代の富士(九重親方)」のガンによる訃報に際し、この場を借りて衷心より哀悼の意を表します。
 また、闘病中・完全完解で職場復帰後のガン患者の方々・サバイバーの方々が職場や社会から排除(インクルージョンされずエクスクルージョンされてしまうこと)されず、多様な方々が幸せになりあえる企業・社会となりますことを心より祈念致しますとともに、筆者もお役に立てるよう尽力できればと思う次第です。

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プロフィール

日本マネジメント総合研究所合同会社 理事長 戸村 智憲 氏

日本マネジメント総合研究所合同会社 理事長 戸村 智憲 氏

早大卒。米国MBA修了。米国博士後期課程(Ph.D)中退。国連勤務の国際公務員として、国連内部監査業務専門官・国連戦略立案専門官リーダー・国連主導の世界的CSR運動「国連グローバルコンパクト(UNGC)」広報業務などを担当。退官後、民間企業役員として人事総務統括や、経営行動科学学会理事、上場IT企業のJFEシステムズ(株)アドバイザー、JA長野中央会顧問などを歴任。日本の人気講師ランキング3位にランクイン(日経産業新聞しらべ)。息子の出産立会や1年間の育休も取得し育児・家事・仕事に取組む。NHK「クローズアップ現代」等のTV出演や連載・寄稿多数。著書30冊。経営指導・人材育成・著述業の3つの柱で一歩突っ込んだ指導で全国各地にて活動中。
ホームページ:日本マネジメント総合研究所合同会社

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