DXへの取り組み、企業はどの程度進めているのか? 推進する上での課題も明らかに

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は2020年9月24日、「2020年度(第41回)当面する企業経営課題に関する調査」の結果を発表した。これはJMAが1979年から実施しているもので、今回の調査期間は2020年7月20日~8月21日。JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者532名から回答を得た。これにより、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み状況が明らかとなった。

5割超の企業がDXを推進・検討中。多くの企業で関心を示す

新型コロナウイルスの影響により急速に社会のデジタル化が進むなか、企業ではDX化に向けた取り組みを、どの程度推進しているのだろうか。はじめに、「DXへの取り組み状況」を尋ねると、「既に取り組みを始めている」が28.9%、「取り組みを始めるべく、検討を進めている」が28.4%と、DXの推進や検討に着手している企業は合計57.3%となり、半数を超えた。

従業員規模別に見ると、従業員数3,000人以上の大企業では「既に取り組みを始めている」との回答が51.1%、「検討を進めている」との回答が32.1%と、合計83.2%が推進や検討に着手している結果に。また、従業員数300人以上3,000人未満の中堅企業では56%、中小企業では34.9%という結果に。「これから検討する」と回答した企業は中堅企業で35.3%、中小企業で43.2%と、DXに関心を寄せる中堅・中小企業が多いことがわかる。
DXへの取り組み、企業はどの程度進めているのか? 推進する上での課題も明らかに

DX担当役員・部署を設けている企業はおよそ4割

次に、DXの取り組みを既に始めている、もしくは検討を進めていると回答した企業に、「DXを推進する担当役員の任命状況」を尋ねた。すると、「専任で担当する役員を任命している」が7.9%、「兼務で担当する役員を任命している」が32.1%と、合計4割の企業がDX担当役員を任命していることが明らかとなった。

特に大企業では、「専任役員を任命」が13.8%、「兼務役員を任命」が45.9%と、合計で6割弱がDX担当役員を任命していることが判明した。
DXへの取り組み、企業はどの程度進めているのか? 推進する上での課題も明らかに
また、「DXを推進する担当部署の設置状況」を尋ねると、「専任で担当する部署を設置している」が24.3%、「兼務で担当する部署を設置している」が15.4%と、DX担当部署を設置している企業はおよそ4割いることがわかった。

一方、「組織横断的なプロジェクトチームがある」は13.8%、「IT部門内に担当者がいる」が12.1%、「経営企画部門内に担当者がいる」が8.9%など、部署はないものの、プロジェクトチームや既存の部門内に担当者がいる企業も、同じく4割程度いることが明らかとなった。

企業規模別では、大企業で「専任部署を設置」が42.2%、「兼務部署を設置」が14.7%と、合計56.9%がDX担当部署を設置している。一方、中堅企業や中小企業では「担当する部署や担当者は置いていない」との回答が2割前後となり、組織体制に課題を抱えていることが予測できる。
DXへの取り組み、企業はどの程度進めているのか? 推進する上での課題も明らかに

DX推進の目的として、8割が「業務プロセスの効率化」を重視

前設問同様、DXの取り組みを既に始めている、もしくは検討を進めていると回答した企業に、「DX推進の目的として重視していること」を尋ねた。その結果、「デジタル技術の活用による業務プロセスの効率化・生産性向上」を「非常に重視している」が34.8%、「重視している」が46.9%と、合計81.7%が最も重視している項目であることが判明した。次いで、「デジタル技術の活用による既存の商品・サービス・事業の付加価値向上」を「非常に重視している」が25.2%、「重視している」が47.5%と、合計72.7%が重要としていることがわかる。

一方、「デジタル技術を活用した新規事業の開発」や「デジタル技術の活用による新規顧客の開拓」、「顧客や社会のデジタル化に対応した根本的な事業構造の変革」は、「非常に重視している」、「重視している」の合計がいずれも5割前後にとどまり、「やや重視している」との回答が多い結果となった。上記の2項目に比べてやや低いことから、新たな企業成長に向けたDX推進には、さらなる検討が必要だといえるだろう。

DXへの取り組み、企業はどの程度進めているのか? 推進する上での課題も明らかに

DX推進の課題、8割超が「人材不足」と回答

最後に、前設問同様、DXの取り組みを既に始めている、もしくは検討を進めていると回答した企業に「DX推進における課題」を尋ねた。すると、最も多かった回答は「DX推進に関わる人材が不足していること」で、「おおいに課題である」が19.3%、「課題である」が41.3%、「やや課題である」が25.9%となった。8割を超える企業で、DX推進における最大の課題は「人材不足」であることがわかった。

また、「DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」(合計77.7%)、「具体的な事業への展開が進まない」(合計76%)などもDXに向けた課題と捉える企業が多いことが判明。DXへの関心や取り組みが進む一方、実現にはさまざまな障壁があるとうかがえる。
DXへの取り組み、企業はどの程度進めているのか? 推進する上での課題も明らかに
DXへの取り組みが大企業を中心に広がり、あらゆる企業で関心が高まっている反面、社内体制や人材不足が課題となり、具体的なビジョンや経営戦略を持てていない企業も多いのが現状のようだ。企業における競争力の維持や強化が求められる世の中で、自社のDX推進をどのように図っていくか、より具体的な施策が求められそうだ。